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家を失い、残ったのはゼロになった預金口座だけ…。懸命に働いてきた男たちを待ち受けていたのは、熟年離婚という現実だった。長年連れ添ったはずの夫婦の関係が、なぜここまで壊れてしまうのか。熟年離婚で絶望を味わった2人の男性を追った。※本稿は、朝日新聞取材班『ルポ 熟年離婚』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
年収がガクンと下がり
離婚を決意した57歳管理職
役職定年になった夫から妻へ離婚を申し出たケースがある。
金融機関で管理職を務めていた夫は57歳で役職定年となり、年収が3割ダウン。当時49歳の妻、子どもと高級マンションに住んでいた。子どもは私立中学校や塾に通い、習い事も多数していて、将来は留学を考えていた。
年収ダウンを機に、夫が家計を見直したところ、この生活レベルを維持すると、子どもの留学費用はもちろん、大学費用を出すのも難しいことがわかった。
そのため「このままでは老後はとてもやっていけないので、生活レベルを落として節約してほしい」「マンションも安いところに引っ越したい」と頼んだところ、妻は「収入が下がるのはあなたの努力不足、私には関係ない」と拒否し、夫を無視するようになったという。
夫は家を出て、弁護士に相談した。これ以上、一緒に暮らすのはつらいということで、妻と話し合い、夫が養育費と学費を支払うことで離婚が成立した。貯蓄は少なかったため、財産分与は残った貯金を分ける程度だったという。
これまでに2000件を超える離婚訴訟や夫婦トラブルを扱ってきた堀井弁護士はこう語る。
「以前は夫の定年退職がきっかけで熟年離婚するケースが多かったが、最近はその前段階で増えている」







