年平均の推測もしてみましょう。北海道・東北・関東・中部では、15年間で分布メッシュの増減率が1.26~1.34倍なので、年平均で約1.55~1.97%増となります。近畿と中国地方は拡大が顕著で、近畿は約1.7倍(年平均3.60%増)、中国地方は約2.7倍(年平均約6.87%増)と全国で最も高い拡大率です。

 このように頭数の増加だけでなく、分布域も拡大しています。従前の対策のままでは、今後も増えて広がる一方であることは明らかです。

 野生動物保護の観点も重要ですが、クマは基本的にはライオンと同じ食肉目に分類される動物です。群れでなくライオンとクマが1対1で戦えば、クマが勝つと言われています。つまり、クマが住宅地を徘徊する状況は、ライオンが住宅地を徘徊すると同じかそれ以上に危険なことなのです。

 現在、緊急時には市街地での猟銃が自治体の判断で可能になるなど、クマ対症療法は進みつつあります。しかし、数字で見ればより根本的な対策が必要なはずです。

 特に本州ではデータが継続的に公表されている都府県が限られるので、きちんと個体数と生息域を把握し、住民に明確な説明責任を果たすことが重要だと思います。何しろ、生命が脅かされる事態なのですから。

クマ「頭数」が増え「生息域」が拡大している、意外な県・地域の実名【数字で納得!】クマ撃退スプレー Photo:PIXTA