『パンプキン!模擬原爆の夏』(令丈ヒロ子作、講談社青い鳥文庫)に詳しく、その事実が綴られている。

 米軍は「ファットマン」の原爆投下の訓練のために、7月20日から8月14日にかけて、模擬原爆「パンプキン」を、東は福島県いわき市から西は山口県宇部市まで、日本列島を縦断するように計49発も投下。日本全土で死者計約400人、負傷者計約1300人の被害者を生んでいる。

 戦後、意図的に隠されていた、この事実は1991(平成3)年になって、ようやく明らかになった。終戦から46年もの間、国民へ知らされていなかったのだ。

 愛知県の「春日井の戦争を記録する会」が米軍の文書を根気強く調査したことによって、模擬原爆の日本投下の詳細が、明らかにされた。

 驚愕させられるのは、8月9日の長崎への原爆投下後の8月14日にも愛知県豊田市に3発の模擬爆弾「パンプキン」が投下されていた、という事実だ。

 この8月14日の翌日、つまり15日に日本が降伏を宣言していなかったら、米軍は3発目の原爆を日本のどこかへ落とそうと計画していた意図がうかがい知れる。

 さらに10万人以上の日本国民が亡くなっていたかもしれないのだ。

米軍の頭を悩ませた
「屠龍」の体当たり

 2024(令和6)年、日本で公開された1本の米大作映画が物議を醸した。

 タイトルは『オッペンハイマー』。

 この劇中、八幡空襲での「屠龍」の体当たりが、第二次世界大戦中の米国による原爆の開発計画(マンハッタン計画)に少なからぬ影響を与えていた、と想像させる印象的なシーンが描かれている。

 ハリウッド大作『バットマン』シリーズや、戦争大作『ダンケルク』などを手掛けた、今、世界で新作が最も待たれるクリストファー・ノーラン監督の最新作として『オッペンハイマー』は話題を集めたが、2023(令和5)年に米・英など世界各国で上映された後、日本は最も遅い公開となった。

 原爆生みの親と呼ばれる米物理学者、オッペンハイマーの半生を描いた映画を、唯一の被爆国である日本で上映することに、さまざまな配慮や忖度が蠢いていたことが理由だが、当のノーラン監督は、「日本人にこそ見てほしかった映画」と力を込めて話していた。