決死の覚悟で日本を守ってくれた隊員たちの最期に迫る写真はイメージです Photo:PIXTA

太平洋戦争の終わりが見えるなか、米軍は北九州への原爆投下を計画していた。それを阻止するために貢献したといわれる、「屠龍」の搭乗員がいた。敵機B-29が空を舞うなか、若き隊員たちは命を賭して体当たり攻撃を仕掛けた。それに怯んだ米軍は、原爆投下地点などの計画を練り直さざるを得なかったという。決死の覚悟で日本を守ってくれた隊員たちの最期に迫る。※本稿は、戸津井康之『生還特攻 4人はなぜ逃げなかったのか』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

北九州への空爆を
特攻で阻止した2人の男

 両翼にエンジンを抱えた日本陸軍の双発(2つのエンジン)の二式複座戦闘機「屠龍」の編隊が、北九州近くの領域に姿を現した米爆撃機B-29の編隊を迎撃するため、山口・下関の小月飛行場から離陸した。

 一方、中国大陸を離陸したB-29の編隊は高度7000メートル上空から北九州へ侵入。日本本土の領空を、悠然と我がもの顔で飛んでいた。

「この高度で戦える戦闘機は日本には存在しない」

 B-29の編隊を率いる団長機の操縦席でパイロットは、そう慢心していた。間もなく爆弾投下地点の上空だ。が、前方から猛スピードで迫ってくる一機の「屠龍」の機影が見えた。

 銃撃を仕掛けてくる気だ。弾丸をかわすために機体を傾ける。弾丸は機体をかすめたようだが、損傷は軽微だ。

「やはり大したことはないな」

 そう思った次の瞬間。

「そんなばかな、こいつは、ぶつける気か!」

「屠龍」は、さらに猛然と速度を上げ、コックピットの目前まで近づいていた。

「屠龍」の操縦士の顔が間近に迫り、眼が合った。

 怒りを燃え滾らせ、一片の恐れも知らぬような日本人操縦士の眼を見て、B-29のパイロットは戦慄した……。