工場内の様子(2)

パソコンやスマートフォンの登場で、ビジネスや生活の環境は大きく変化した。同様の可能性を秘めているのがスマートグラスだ。住宅建材大手のLIXILは、製造工場でスマートグラスを活用し始めた。では、スマートグラスの導入で、どのくらいの生産性向上を狙えるのか。担当者に状況を聞いた。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)

住宅設備大手のLIXILが
製造工場にスマートグラスを導入

 人手不足や人件費高騰を背景に、産業用スマートグラスへの期待が高まっている。

 国内でいち早く導入を決めたのが、住宅設備大手のLIXILだ。10月21日、LIXILは住宅エクステリアの製造を行っている群馬県の粕川工場で、スマートグラスの活用を始めたことを発表した。

 もっとも、スマートグラスは大きく二つに分けることができる。日常生活やゲームをする際に着用する個人向けグラスと、工場などで使用される産業用グラスだ。

 2013年、Googleは米国で個人向けの「Google Glass」を発売した。しかし、スマートグラスを着用しての運転や歩行で事故が発生しやすくなるのではないかという安全上の懸念や、まばたきなどの小さな動作で撮影が可能なことから、プライバシーの問題が提起された。

 米国では商業施設内でスマートグラスの使用が禁止されるなど、社会的な反発が高まった。結果、Googleは15年に個人用スマートグラスの販売から一時撤退。その後、製造業や医療、物流現場などで使用することを前提とした産業用モデルにシフトし、17年に「Glass Enterprise Edition」を発売した。

 一方、Appleは24年に「Apple Vision Pro」を発売。同社はこのスマートグラスを「空間コンピューター」とも表現しており、現実の空間にアイコンや画面などが表示され、自身の手指で直感的に操作することができる。

 今回、LIXILは住宅エクステリアの製造を行う粕川工場に米ビュージックス社製のスマートグラスを導入し、生産性の向上を図るという。では、具体的にどの程度の効果を見込んでいるのか。

 ダイヤモンド編集部は、LIXILの工場内での作業工程を取材し、削減を見込んでいる人数や作業時間などが判明した。次ページでは、担当者が導入の経緯や費用、スマートグラスの導入により見込んでいるコスト圧縮効果について明かした。