夕日とタワーマンション群写真はイメージです Photo:PIXTA

不動産価格高騰の根源にある
日本の住宅政策のひずみ

 日本初の女性首相として、高市早苗氏の新政権がスタートした。アベノミクスの基本路線を継承するとされる積極財政に、市場の注目が集まっている。

 確かに、積極財政の推進や低金利政策の維持は、経済全体にはプラスに働くという期待もあるだろう。だが、私たちの「住まい」という観点で見ればどうだろうか。これらの政策は総じて不動産価格を押し上げる圧力となるものであり、すでに高騰を続ける市場をさらに加速させる要因ともなりかねない。

 一方で、新政権の政策以上に、目を向けるべき点がある。実は、この価格高騰の根源には、日本の住宅政策が長年抱えてきた「“ズレ”=ひずみ」が存在する、ということでもあるからだ。ひずみから見えてくる不動産市場の現状と、私たちが持つべき視点とは、一体どのようなものなのだろうか。

不動産価格の高騰は続く?
新政権の経済政策がもたらす影響

 まずは新政権の政策が市場に与える影響、すなわち住宅価格を押し上げるとされるメカニズムについて確認しておこう。

 すでに都内の住宅事情は深刻だ。新築マンションの価格が高騰を続ける中、その影響は中古市場にも波及。中古価格の上昇傾向は明らかで、もはや5000万円以下で買える東京23区内の中古マンションは、全体の2割にも満たない。

 新政権の政策は、この状況をさらに加速させるだろう。柱となる低金利政策と財政支出の継続は、金利上昇を抑制し、円安傾向の継続にもつながりやすい。円安が建設コストを高止まりさせて供給を絞る一方、ホテル用地との競合を招き、海外投資家には割安感を与える。これらが複合的に価格を押し上げているのだ。