11月から12月の年末になると増える、「年内にお願いします」などの無理なお願いで、疲弊していませんか。言われたままに全てを抱えるのではなく、うまく断りながら、相手も納得する着地点へ導くにはどうすればよいでしょうか。
コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』の著者・田中耕比古氏に、具体的な解決策を教えてもらいました。(構成/ダイヤモンド社・林拓馬)

【年末の繁忙期】「年内にお願いします」と無理なお願いをされたとき、頭のいい人はどう返す?Photo: Adobe Stock

年末の無理な依頼への向き合い方

年末や繁忙期になると、「これ急ぎでお願いします」「年内に終わらせたいです」といった無理めの依頼が増えます。

勢いで全部を引き受けると、残業と品質低下に直結しますし、チームの士気も下がります。

そこで有効なのが、断る(0%)、一部だけ受ける(50%)、すべて受ける(100%)という三段対応です。

状況に合わせて使い分けることで、相手に寄り添いながら現実的な落としどころへ導けます。

まず〈0%=断る〉です。

この場合、単なる拒否ではなく、代替案を添えることが肝心です。

たとえば「年内に資料をお渡ししても、年末年始のお休み、年始のご挨拶まわりなどを考えると、実際に業務でお使いいただくタイミングは、1月第2週からではないでしょうか。そのため、もし可能でしたらそのタイミングまでに準備してお渡しするという形にさせていただけますと、私どもも助かります」と提案します。

相手のスケジュールを言語化し、合理的な日程へ“誘導”できれば、角を立てずに調整できます。

次に〈50%=一部だけ受ける〉です。

相手のニーズの“核”を見極め、そこを先出しします。

たとえば「ご希望の50個ですが、試作品として5個だけ先にお渡しするというのはいかがでしょうか」「年内に企画書をすべてつくるのは難しいため、全体サマリーとターゲット顧客に関する2点を先にお渡しさせていただければと思います」など、相手のニーズに合致する部分を狙い撃つのがコツです。

また、今回の例では、仕様や方向性を確認するための材料を先に渡すという提案になっていますので、全体の手戻りを減らし、残りの作業をスムーズに進める効果も期待できます。

最後に〈100%=すべて受ける〉です。勝負案件や戦略的に恩を売りたい相手に限って選びます。

とはいえ、もともとが無理目の依頼ですから、無条件にすべてを受け入れるのはリスクが高いと言えます。引き受ける際には、①納期、②範囲、③品質基準、④追加要望の扱いを文書(メール等でも構いません)で確定し、相手の“後出し”で炎上しない仕組みを整えておくことが大切です。

また、作業の区切りごとに合意ポイントを設定し、小さな検収を重ねていくと安全です。

このように、相手の希望通りに全ての要求に応えなくても、相手の仕事が前に進むための一助となることができれば満足感を抱いてもらえます。

今回ご紹介した三段対応を引き出しに入れて、相手にうまく伝えるように心がければ、無理な押し込みを、双方にとって価値のある取組に変えることができるでしょう。

(本記事は『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』の著者・田中耕比古氏への取材をもとに作成しました)