黒井:情報の材料ですよね。誘導しようとしている論調をそのまま鵜呑みにしないことは言うまでもありませんが、そこから読み取れることもあるということです。

 また、ロシア人のジャーナリストが国外に脱出して、バルト三国あたりを拠点に活動しているメディアがあります。メデューサやiStoriesなど複数ありますが、彼らはたしかにロシア国内にまださまざまな情報源を持っていますから、絶対に要チェックなメディアです。

 ただし、ことクレムリン内の政治情報などは誤報も非常に多いですね。

 でも、そんな裏取りされていない未確認情報が、欧米のメディアにもよく引用されるのです。それで結果的には誤報も多くなります。権力中枢の内幕情報などは、スクープが出てきても、1社独占なら自分はいったん保留します。

 ただ、ベリングキャット(オランダに本拠を置く調査報道機関)と協力しているインサイダーという独立系メディアがあって、ここは要チェックです。オープンソース(公開情報)を活用していると言ってますが、通話記録とか細かい情報をよく調べています。背景がよくわからないのですが。通常の公開情報収集だけとは思えない情報をときどき出してきます。

イギリスの報道には
政府の策略が紛れ込む!?

小泉:BBCとメディアゾーナ(編集部注/ロシアの独立系ニュースサイト)のロシア側の死者数カウントなども、背景は不明ですよね。イギリスは諜報大国なので、彼らが出してくる情報も無批判には受け取れない。

黒井:イギリス当局の関与が疑われるメディア情報は、きわめて政治的なんですよね。私には前々から書いてきた仮説があります。「イギリスは米国と示し合わせて、あえてロシア側に不利になる情報を出してメディア工作しているのではないか」という仮説です。

 イギリスのメディア各社は、ウクライナの情報当局と協力している形跡もときにあるのですが、とにかくロシア側を攻撃するような内容の記事を出すことが非常に多い。