まずはロシア軍の新聞『赤い星』です。これを毎日見ておくのが私は基本だと思います。さらに、ロシア国防省のサイトも実によくできています。ロシア国防省サイトのニュース欄が、非常に細かい部隊の訓練などまで毎日何十件も掲載していて、これを見るだけでロシア軍の行動はかなりわかります。

 軍のテレビ放送・ズヴェズダも気合いが入っています。こうした官製メディアによる情報アピールというのは、ソ連時代、あるいはエリツィン時代にはほぼなかったのですが、プーチン政権になってからだいぶ変わりました。

 それと、ロシアは地方紙が多いんです。もともとはスターリンの方針ですね。そうした地方紙に興味深い情報がよく掲載されています。かつては紙の新聞しかなかったのでチェックするのが困難でしたが、今はメッセージアプリ・テレグラムで見られますね。

真偽不明のSNSアカウントを
ニュースとして引用する欧米メディア

黒井:公式の情報源も重要ですが、そうでない情報源、つまり商業メディアやネットのサイトも重要です。

 しかし、そうした情報源の場合、とにかく膨大に誤情報があります。シンプルに誤認識の場合もあれば、最初からテキトーに煽っているだけのもの、さらには計算して誘導しようしているケースもかなり見られます。

 なかでも評価に手を焼くのが、ロシア語圏でいちばん出回っているテレグラムですね。あそこで情報発信しているアカウントもいろいろで、後で検証すると、それなりに当たっている場合と全然当たっていない場合があります。当たっていない場合のほうがずっと多いですが、なかには使える情報もあるので、頭から無視もできないわけです。他にもさまざまなSNS、特にYouTubeにも実に多種類のアカウントがあります。

 こうした怪しい情報源がいくつもありますが、たとえば、米国の『ニューズウィーク』をはじめ多くのメディアが「これはすごい情報源だ」と評価していたアカウントに、SVR将軍と名乗るアカウントがあります。

 ロシア情報機関の関係者と自称して、まるで見てきたようにプーチン政権中枢部の内幕を語る。「ゲラシモフ(編集部注/ワレリー・ワシリエヴィチ・ゲラシモフ。ロシア連邦軍参謀総長兼第一国防次官)が癇癪を起こして幹部会議で暴れた」みたいな話です。