「大学受験」は10代における最大のイベントです。残念な側面でもありますが、いい大学に行けば、なりたい職業になれる確率は上がり、将来の選択肢は増えるのが現在の日本です。一方で、「学歴」だけで人生の成功が約束されるものではありません。
本記事では「学歴だけではなく、大人になってからもなぜ学びが必要なのか」をテーマに『学びをやめない生き方入門』(テオリア)の著者であり、立教大学経営学部教授の中原淳氏と『17歳のときに知りたかった受験のこと、人生のこと。』の著者である、wakatte.TVのびーやま氏への特別対談をお届けします。(構成:藤田悠[テオリア]/撮影:Akifumi Shintani)

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「ただでさえ忙しいのに、学ぶことにメリットなんてありますか? 給料が上がるとか、転職に有利というわけではないですよね? だとすると、わざわざ学ぶモチベーションが湧きません」(30代・男性)※1

「学ばない理由」を探していないか

中原淳(以下:中原):学んでいる人のほうが昇進・昇給しやすいというデータはたくさんあります。国の統計にも出ていますし、転職の場面でも有利に働くことが多いですね。

びーやま:そうなんですね! 研究者のあいだでは常識でも、一般にはあまり知られていないと思います。実際どのくらい効果があるのか、僕も気になりますね。

中原:たとえば、OJT(現場での学び)を計画的に行うことで、生産性が向上するといったデータがあります。いきなり無茶振りをするのではなく、段階的に高度な仕事を割り振ったり、丁寧に相談に乗ったり助言したりして、働く人の「学び」を確保している企業では、やはり生産性が高くなっています。※2

びーやま:つまり「学んだほうが仕事に有利」は、データで裏づけられているわけですね。

中原:そうなんです。ただ、この人の場合、それを知らないから学んでいないのか……ちょっと疑わしいですね。

びーやま:たしかに(笑)。「やらなくてもいい理由」を欲しがっているのかもしれませんね。

1日1分でも平均以上

中原:「社会生活基本調査(令和3年)」によると、日本の有業者が「学び」に使っている時間は「週平均で7分」。つまり、「1日1分」です。

 あくまでも平均値なので、「すごくたくさん勉強している人」と「まったくやっていない人」がいるということなんですが。