「大学受験」は10代における最大のイベントです。残念な側面でもありますが、いい大学に行けば、なりたい職業になれる確率は上がり、将来の選択肢は増えるのが現在の日本です。一方で、「学歴」だけで人生の成功が約束されるものではありません。
本記事では「学歴だけではなく、大人になってからもなぜ学びが必要なのか」をテーマに『学びをやめない生き方入門』(テオリア)の著者であり、立教大学経営学部教授の中原淳氏と『17歳のときに知りたかった受験のこと、人生のこと。』の著者である、wakatte.TVのびーやま氏への特別対談をお届けします。(構成:藤田悠[テオリア]/撮影:Akifumi Shintani)
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お悩み相談
「東大卒の部下がぜんぜん成果を出せていません。やっぱり、学歴なんて単なるペーパーテストの結果。いくらお勉強ができても、部下として使えないのは困りますね」(40代・マネジャー)※1
「高学歴=仕事ができる」ではない
中原淳(以下:中原):研究の世界では、「大学入試の得点率」と「大学入学後の成績」に相関が見られることはわかっています。つまり、受験のときに優秀だった学生ほど、大学でも成績がよくなる。
びーやま:でも、卒業後の「仕事の能力」とは関係がない?
中原:さすがに、仕事は受験よりも「かなり先」の話ですからね。入試の得点率が仕事の成果に直結するとは言えないと思います。たとえあったとしても、かなり弱い相関でしょう。
やはり仕事のパフォーマンスは、どんな上司に当たるか、どんな仕事を任されるかといった環境要因が大きい。だから「高学歴だからといって仕事ができるとは限らない」というのは正しいんじゃないでしょうか。
ただ、それの何が問題なんだろう? 部下が成果を上げられないなら、それは上司であるこの方の責任だと思いますが…。
「これだから東大卒のやつは…」とみんな言いたい
びーやま:そこが根深いところですよね。おそらくこの相談者さんは、自分より学歴の高い新人にちょっと嫉妬していたんじゃないでしょうか。「ひょっとすると、自分よりもめちゃくちゃ優秀かもしれない…」とビビっていたんだと思います。
だからこそ、その部下が成果を出せなかったときに、「高学歴のくせに…」「これだから東大卒のやつは…」と安心している。世の中、そういう人は一定数います。正直、僕だって東大卒やハーバード卒の人が部下になったらきっとビビるでしょうし、この方の気持ちもわかります。
中原:企業が学歴で人を選ぶのは、選抜コストを下げるためです。学歴というフィルターをかけて、「この人は企業内教育を通じて学んでいけるだろう」「就職後の成長が早いだろう」という見込みを立てることで、採用にかかるコストを軽減しているにすぎません。
実際に仕事ができるかどうかは、学歴そのものとは関係ないのに、周囲が勝手にハードルを上げてしまっているという面はあるでしょうね。コストをどれだけでもかけていいのなら、実際にその人に仕事をさせてみて、その成果を見ながら採用を判断していけばいいはずです。それがいちばん確実でしょう。でも、現状ではそんなにコストはかけていられません。



