Aは反発したが、前回の面談の時と同じく、業務遂行能力に問題がある、現部署の人員余剰、就業規則上65歳以降の雇用義務がなく、Dはシステムのオペレーションを後輩に指導できるレベルで使いこなしていることを説明した。そして、

「Aさん、ぜひ工場で頑張ってみませんか。65歳以降は工場勤務が主で、Dさんは特殊例です。周囲にも確認してみてください。了承いただけない場合は、9月末で契約満了による退職となります」

 Aは翌日、65歳以後の工場勤務を承諾した。C部長はその場で、E社労士の助言に基づき、契約内容と契約更新時の人事評価の基準を詳細に説明した。

新しい環境で働くのも悪くない

「Aさーん、2番レーンのしゅうまい補充をお願いしまーす」

「まかせとけ!」

 10月。工場勤務になったAは生き生きと働いていた。上司にあたる工場長はAより年上で経験が長いし、製造課長は35歳と若いが、かえってそれが功を奏し、何かとAを頼りにしてくれた。

「新しい職場も悪いもんじゃないな……俺、まだまだ元気だし、頑張ろう」

 Aの様子を見たC部長は、ほっと胸をなでおろした。

木村政美 プロフィール
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