「退職後はもう働かない」としたら、定年までに貯金はいくら必要か?写真はイメージです Photo:PIXTA

2019年、金融庁が公表した「老後2000万円問題」が世間に衝撃を与えました。しかし、必要なお金は人によって違います。定年後も働くのか、働かないのか、倹約生活を送るのか、多少の贅沢はしたいのか――。2000万円は、あくまで試算にすぎません。甘すぎる見積もりは厳禁です。

※本稿は、田中靖浩『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』(マガジンハウス新書)の一部を抜粋・編集したものです。

定年までに貯金はいくら必要か?

 長い間安泰だったサラリーマンの老後に不穏な気配が漂っています。「なんとかなるさ」と高を括(くく)っている人がいまだ多数派である一方、「このままで良いのだろうか」と不安を感じている人が増えています。

 じわじわ迫る不安感の背景に「この国にはサラリーマン・公務員が多い」事情があります。サラリーマンや公務員といった勤め人は、定年によって「働くのはこの年齢まで」と区切られます。自分は働きたくても年齢によって強制終了させられるのがサラリーマン・公務員の特徴です。

 そんな強制終了があっても文句が出なかったのは、その後に十分な退職金と年金が用意されたからです。それに加えて現役時代に貯金をしておけば、少々の贅沢だってできる。だからみんな定年を受け入れてきたのです。

 人の一生を「第1期:子ども期、第2期:大人期、第3期:老人期」に分けるなら、サラリーマン・公務員の生き方は「第1期:子ども期」に勉強して良い会社・組織に入り、「第2期:大人期」をそこで働きながら過ごす。「第3期:老人期」は第2期に蓄えた財産の取り崩しで生活する――と、そんな一生です。老後の生活になんとなく不安を感じるサラリーマンは第2期のうちに「貯金」しようと考えます。ここで悩ましいのは「定年までにいくら貯金すべきか?」がわからないことです。