京都のホテル関係者が「台風の目になる」と警戒する「烏丸御池ホテル(仮称)」プロジェクトが市の中心部で進行している。

 着工した現在も詳細は明らかにされず、「外資の高級ホテルらしい。上顧客を奪われるのでは」とうわさが飛び交う。東京に外資系高級ホテルが出揃った今、海外富裕層にも高い人気を誇る京都が高級ホテル戦争の次なる舞台となっている。

 冒頭のプロジェクトは、平均客室単価5万5000~6万5000円という超高級ホテルを地下鉄烏丸御池駅そばに開業するというものだ。オーナーのSPC(特別目的会社)から企画業務を担うジェイ・アイ・ティーによると、竣工は2010年で、地上11階・地下3階の全154室。海外顧客比率6割を想定し、外資チェーンに運営を委託する。

 烏丸御池だけではない。世界で高級リゾートを展開するアマンリゾーツが市内北西部で開業を計画。JR二条駅周辺では地上9階建てで300室規模の外資系ホテルを来春に着工するプロジェクトが浮上した。

 これまでの外資進出はウェスティン都ホテル京都やハイアット リージェンシー 京都など既存ホテルを継承するかたちだったが、新設計画が相次いで表面化し、地元ホテル勢は「対外資」を掛け声に大規模改装を急いでいる。

 ただし、「東京のようにはいかない」(地元ホテル関係者)という冷ややかな見方もある。

 東京ではオフィスビルにホテルを併設すれば容積率(敷地面積に対する延べ床面積の割合)の上限を緩和する措置があり、ホテル誘致のメリットは大きい。

 一方、京都市では今年9月に新景観政策が施行され、景観保護のために建物の高さ規制が強化された。ホテルも例外ではなく、前述の烏丸御池ホテルは「新規制を免れた最後の高さ45メートル級ホテル」といわれる。

 規制をクリアしても安心できない。かつて京都ホテル(現・京都ホテルオークラ)が高層化された際、景観を損ねるとして仏教界が反発。同ホテル宿泊者の拝観を断る立て看板を掲げた。近年では、運営が外資に移って営業スタイルを変更したホテルが地元有力者らにそっぽを向かれ、宴会などの受注を大幅に失ったケースもある。

 「地元の反対で頓挫するプロジェクトもあるだろう」とささやかれ、開業するのも、経営を軌道に乗せるのも一筋縄ではいかない。それでも外資勢は進出に意欲満々。“古都”ならではの戦いが繰り広げられることになる。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 臼井真粧美)