「心の平静」を追求する
古代ギリシャ・ローマの「ストア哲学」
秋に楽しみたいのは、星空や紅葉といった自然だけではない。哲学者フリードリヒ・ニーチェの名言に「秋は自然よりも魂の季節であることに気づかされる(I notice that Autumn is more the season of the soul than of nature.)」がある。
人間の「魂」を探るのは哲学の役目だ。
難解でとっつきにくくも感じられる哲学だが、現代に生きるわれわれの指針にもなりうる「人生哲学」を、古代ギリシャ・ローマ時代のストア哲学から簡明に解き明かして提案するのが、次に紹介する『ストイシズム』(白揚社)である。
著者のウィリアム・B・アーヴァイン氏は、米オハイオ州デイトンにあるライト州立大学哲学科の名誉教授。『ストイシズム』の原書は2009年に刊行された『A Guide to the Good Life』で、世界的なベストセラーになったという。
人気漫画原作で2022年に菅田将暉主演でテレビドラマ化、2023年に映画化された『ミステリと言う勿れ』に、主人公の愛読書としてマルクス・アウレリウスの『自省録』が登場していた。実は『自省録』は、ストア哲学者(ストア派)であるアウレリウスの代表作であり、本書にも随所で引用されている。
紀元前300年頃にゼノンによって開始されたストア哲学は、セネカ、ムソニウス・ルフス、エピクテトス、そしてマルクス・アウレリウスといったストア派哲学者たちを輩出した。アーヴァイン氏は本書で、彼らが追い求めたのは「心の平静」だったと指摘する。
ただし、彼らのいう「心の平静」は、われわれが「ストイック」という言葉から連想するような、禁欲的に我慢をしたり、消極的になったりすることではない。「悲しみ、怒り、不安のようなネガティブな情動がなく、喜びのようなポジティブな情動があるときに生じる心理的な状態」とアーヴァイン氏は定義している。
「コントロール三分法」で
勝負の不安を解消
本書には、ウェルビーイングにもつながる「心の平静」を得るための、ものの考え方や行動の仕方がいくつも提案されているのだが、ここではその中から「コントロール三分法」を紹介しよう。







