「V字」とは何か。例えばAさんとBさんとCさんがいて、AさんとBさん、AさんとCさんにはつながりがあるが、BさんとCさんの関係性が乏しい場合、3者の関係は「V字」になる。ここで、BさんとCさんの関係も良好であれば「三角形」が成立する。

 V字をひっくり返して「Λ」にすればわかりやすいかもしれない。山形の頂点にAさんに置いたトップダウンの指示系統になる。この場合、3者とも孤立しやすいと矢野氏は指摘する。かたや三角形であれば、回転しても同じ三角形であり、各頂点は原則平等になり、つながりが強化され、孤立感が解消されやすい。

1兆個超のデータを分析してわかった
シンプルな理論

『トリニティ組織』書影『トリニティ組織』(矢野和男著、草思社、税込1980円)

 矢野氏が三角形の人的ネットワークの優位性を主張するのは、単なる思いつきではない。同氏の研究チームは、長年にわたり、オリジナルの赤外線通信機能とセンサを備えたウェアラブルデバイスで、職場などでの人間関係をデータ化して分析してきた。

 そして、1兆個を超えるデータの解析により、人間の幸せ・不幸せを決定づける重要な要素「ファクターX」を発見。その論文は英国の権威ある科学論文誌に掲載されている。

 どうだろう。科学的根拠がありつつも、これ以上ないくらいシンプルな理論ではないだろうか。意識して組織内に三角形を作っていけばいいのだ。

 この三角形の理論は、職場だけでなく、プライベートを含むあらゆる人間関係に応用可能だ。2人の友人がいて、その2人が互いに知り合いではないとしたら、3人で会って紹介すれば三角形の関係になる。職場でも、例えば他部署の人とコミュニケーションをとる際に役立つ考え方といえる。

 簡単なので、ぜひ実践してみてほしい。もしかしたら、年内に見違えるほど組織の状態がよくなっているかもしれない。

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