写真はイメージです Photo:PIXTA
同じ渋谷区に“自分とまったく同じ名前”の人物がいる。そんな偶然を知った瞬間から、心臓がバクバクと高鳴った。メールを送るか迷い続けて1年。そしてついに「田中宏和」と「田中宏和」が出会う日がやってくる。名刺を差し出しながら笑い合った、その瞬間からすべてが始まった。名前という境界を越えてつながる、ユーモラスで少し不思議な物語。※本稿は、ブランド・クリエイティブ・ディレクターの田中宏和『全員タナカヒロカズ』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
同じ渋谷区に住む同姓同名の
「田中宏和」がいることを知った日
はじめまして。(中略)
「田中宏和」……それは私の名前です。(中略)
自分の名前でこれだけ遊んでる人も珍しいですよ。って言うか、「田中宏和」って名前、そんなに遊び甲斐があったんですね。近鉄の田中宏和さん、ゲーム音楽の田中宏和さん、くらいは私も存じ上げていましたが、他にこんなにおもしろネタがあったとは。なんだか少し自分の名前が輝いている感じがしてきましたよ。見た目が四角くって、書くときにもバランスをとりづらいし、なんだか普通っぽいしなんて思ってましたが結構遊べる、いや遊んでいる人の出現に自分の名前の認識が改まった気がします。そういう私自身は渋谷でデザイン事務所を経営している田中宏和(37)です。
「田中宏和」……それは私の名前です。(中略)
自分の名前でこれだけ遊んでる人も珍しいですよ。って言うか、「田中宏和」って名前、そんなに遊び甲斐があったんですね。近鉄の田中宏和さん、ゲーム音楽の田中宏和さん、くらいは私も存じ上げていましたが、他にこんなにおもしろネタがあったとは。なんだか少し自分の名前が輝いている感じがしてきましたよ。見た目が四角くって、書くときにもバランスをとりづらいし、なんだか普通っぽいしなんて思ってましたが結構遊べる、いや遊んでいる人の出現に自分の名前の認識が改まった気がします。そういう私自身は渋谷でデザイン事務所を経営している田中宏和(37)です。
お正月にメールを読んで、心臓はバクバク、汗ばむのを感じた。うれしい発見なのだけども、わたしは同じ区に住んでいる。すぐ近くに別の田中宏和が生きていて、普通に寝起きしているのだ。すぐに返信するか。しかし、そのがっつき感がどう受け止められるだろう。そもそも会って何を話せばいいのか。「田中宏和です」「田中宏和です」で、ハイ終わり。その先の会話のイメージができなかった。







