DESC法の成否を分ける
最重要項目「選択肢の提示」

 そして四つ目のCが最も重要で、Choose(選択肢を示す)です。先ほど伝えた提案内容が無理だった場合に、別の選択肢や代替案を提示できるかどうか。アサーティブコミュニケーションは、Cをしっかり用意できるかどうかが成否を分けることが少なくないのです。

 多くの人は発言を求められると「こうしてほしい」と言うだけ、つまりSで終わってしまうのです。しかし、その伝え方では、相手に、受け入れるか受け入れないか、イエスかノーを迫ることになり、返答への心理的ハードルが高くなってしまいます。

 そうではなく、「A案かB案、私はどちらでもいいですが、どちらがいいですか」と選択肢を示して相手に決定権を委ねるほうが、交渉は有利に進みますし、自分の意見も伝えられ、相手の意見も尊重できるわけです。相手は自分が選べているという感覚を持ちやすくなるので、受け入れられやすくなります。

 これが気まずい会議や言いづらいことをうまく伝えるためのアサーティブコミュニケーションスキルなのですが、無風な人というのは、意見の中身自体は当たり障りのないことだとしても、「私はこれを提案しますが、こちらでもいいと思っています」と、(ときには言外に)Cも提案しているのです。

 例えば企画会議で、マーケティング施策について議論している場面を想像してください。無風な人は、会議の最初でも最後でもなく、真ん中あたりで手を挙げます。「ちょっと、いいですか?」と言って、「先ほど○○さんが言っていた案、私は基本的にそれがいいと思います」と賛成の意を示します。ゼロベースでの意見やアイデア出しはあまりしません。真ん中で発言するので、必ず前に発言した人がいて、それをちゃんと聞いているのです。

 そして続けて「○○さんの案はいいと思います。けれども、こういうデメリットやリスクもあると思うので、そういう場合は△△さんのやり方も私としてはいいと思います。どちらにしても会社にとってはメリットがあると思います」という言い方をします。