「途中でやめると、つい続きが気になる」。そんな経験はありませんか? 心理学ではこの現象を「ザイガルニック効果」と呼びます。やる気を引き出すテクニックとして紹介されることも多いですが、実は注意力の観点から見ると、集中を乱すリスクをはらんでいます。話題の動画「50歳でも記憶力はアップ!加齢に勝てる脳トレ法」を公開した池田義博氏は、日本記憶力選手権大会で6回優勝。試験・資格・英語・ビジネスなど、あらゆる場面で結果を出すためのメソッドを紹介します。
※本稿は、著書「世界記憶力グランドマスターが教える脳にまかせる勉強法の一部を抜粋しました。

「やり残すと続きが気になる心理」は、集中力には逆効果

 心理学の世界で「ザイガルニック効果」というものがあります。

 これは、未完成の仕事や達成途中の目標があると、それらが頭の中でずっと気になり続けるという現象のことです。

未完成の仕事や達成途中の目標があると、それらが頭の中でずっと気になり続けるPhoto:PIXTA

 人間には、集中して取り組んでいるタスクに関して、途中で中断したり、中断させられたりすると、それを完成しなければ気が済まないという心理が働くのだそうです。

 そして、そのタスクがゴールを迎えると途端に、その効果は消えて頭の中に浮かんでこなくなるのです。

 このザイガルニック効果を勉強などの習慣づけに利用すべきだと説いている書籍などを目にしますが、その日の勉強を区切りのいいところで終わらせず、あえて中途半端な位置で終わらせるのです。

 そうすることによって、ザイガルニック効果がはたらき、続きが頭の中でずっと気になっているため、完成させたいという欲求を次回始めるときのやる気に転化させ、スムーズに取り組むことができるというわけです。

 確かにそういう利点もあるかとは思いますが、注意力の観点からすると、この方法は逆に弊害になるように思えます。

タスクは毎回必ず最後まで完結させる

 なぜなら、集中力のためには、心配事など無意識に注意をそちらに向けるような要因はなるべく排除しておくべき、と考えるからです。

 ザイガルニック効果が働いているうちは、常に未処理の課題が気になります。

 たとえば、別の何かに集中しているときに、ふとタスクの残りを処理したいという気持ちが浮かんできたとしたら、それは脳にとって注意力を消費するやっかいなノイズでしかありません。

 そのため、注意力を温存するためにも、日々のタスクは毎回ゴールを迎えてほしいのです。

 しかし、毎日きっちりタスクの区切りまでゴールを迎えるのは、かなり大変です。それはタスクの難易度や取り掛かれる時間が一定ではないからです。