勉強してもすぐに忘れてしまう……。そんな悩みを抱く人に試してほしいのが、『ULTRA LEARNING 超・自習法』で紹介される「フラッシュカード学習」だ。本書では「知識を定着させる最強の方法は“思い出す”ことだ」と説く。カードを使い、頭の中から答えを引き出す練習をするだけで、記憶は劇的に強化される。本連載では、ウォール・ストリート・ジャーナル・ベストセラーにもなった本書の「学習メソッド」を紹介していく。(構成:ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)
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なぜ「思い出す練習」が最強なのか
どれだけノートを読み返して復習しても、テストで思い出せない……。そんな経験はないだろうか。
本書によれば、「復習」ではなく「思い出す」(回想)こそが記憶を定着させるカギだ。
人間の脳は、情報を“思い出す”過程そのものによって記憶を強化するという。
この現象は「テスト効果(testing effect)」として知られている。脳は記憶を思い出すたびに神経回路を再活性化し、その経路が強化される。
つまり、思い出すという行為は「知識の再構築」そのものであり、ただの確認作業ではないのだ。
この原理を裏づける実験がある。学生に英単語を覚えさせ、一方のグループには何度も読み返させ、もう一方には繰り返しテストを受けさせた。
直後の結果はほぼ同じだったが、その後の経過で大きな差が出た。本書ではその結果をこう説明している。
問題はその後だ。数日後にもう一度テストしてみると、思い返す練習は、受動的な復習よりはるかに優れていたのである。勉強した直後に役立ったものは、本当の学習が達成されるために必要な「長期記憶」を形成してくれないことが明らかになった。(『ULTRA LEARNING 超・自習法』より)
この結果が示すのは、「記憶は思い出すほど強くなる」という単純だが強力な法則だ。
思い出すたびに脳の回路が補強され、時間がたっても情報を取り出しやすくなる。逆に読み返すだけでは、短期的な理解は得られても、記憶のネットワークが固定されない。
学びを「使える知識」に変えるには、思い出すという負荷を自分に課すことが必要なのだ。
「フラッシュカード」とは何か?
では、この「思い出す練習」を日常的に続けるにはどうすればよいのか。答えがフラッシュカードである。
学校で英単語を覚えるときに使った単語帳を思い出してほしい。小さなカードの表に「質問」や「用語」を、裏に「答え」や「説明」を書く。それが基本形だ。
カードを1枚ずつ見て、頭の中で答えを思い出す。正解なら次へ、間違えたら後でもう一度挑戦する。“知識を思い出す”ことを繰り返す練習法であり、記憶を引き出して鍛えるトレーニングである。
いまでは紙のカードだけでなく、スマホアプリで自動的に復習時期を管理してくれる「デジタルフラッシュカード」も主流になっている。単語だけでなく、資格試験の要点や歴史の年号、ビジネス知識など、応用範囲はきわめて広い。
「フラッシュカード」は“記憶筋トレ”の道具
本書では、クイズ番組「ジョパディ!」で20万ドルを獲得したロジャー・クレイグが、間隔反復アルゴリズムを備えたフラッシュカードソフトを活用していたことを紹介している。情報を思い出す最適なタイミングで復習させる仕組みが、忘却を防ぐのだ。
このソフトウェアのアルゴリズムは、何万件もの「カード」を扱うことができ、さらに復習を行うスケジュールも管理してくれる。(『ULTRA LEARNING 超・自習法』より)
近年では、AnkiやQuizletなど、スマホで使えるデジタルフラッシュカードが普及している。学習データを自動で管理してくれるため、「復習のタイミングを考えなくていい」のが大きなメリットだ。
今日からできる「フラッシュカード」活用のコツ
著者の理論を実践に応用するなら、次の3点を意識したい。
①カードは「短く、具体的に」書く。
②思い出せなかったカードは翌日に再挑戦。
③「完璧に覚えた」と思っても定期的に復習する。
そして何より大切なのは、「完璧に覚えるまで繰り返す」のではなく、「何度も思い出す」ことだ。
著者が言うように、知識は使うことで定着する。カードをめくるたび、あなたの脳は確実に鍛えられていくだろう。





