実は、その会社が特殊なわけではなく、別のマーケティング会社でも似たような光景を見ました。若手とやり合っていたベテランは、後で私にこんなことを言うのです。「部下と対等な人間関係を築けたことが嬉しいんですよ」と。
役職が上がると
人は孤独になる
なぜこのような関係性が成立するのでしょうか。それは、ベテランの言葉にある通り、単純に嬉しいのだと思います。役職が上がると、だんだん周囲は気を遣って、何も指摘してくれず、本音を言ってくれなくなります。ベテランにしてみれば、仕事がやりやすくなる半面、どこか寂しさや、自分の成長実感が得られない、このままでいいのだろうかという不安を抱えることになります。
「何でもいいから忌憚なくフィードバックしてほしい」と言っても、もちろんそれは表面的にしか受け取られません。上司に人事権を握られている部下が「奇譚なく」意見を言うことを躊躇(ちゅうちょ)することもあるでしょう。
こうして、ベテランは自分の判断や、やり方が本当に正しいのか、時流に合っているのかが分からなくなっていきます。寂しさや孤独感や「自分は裸の王様になっているのではないか」という不安を持つベテランにとって、変に忖度せずに、真っ向からぶつかり、誰も言ってくれないことをきちんと言ってくれる若手の存在はとても貴重なのです。
年齢や経験が中途半端に近い人の場合、相手のプライドを傷つけるかもしれないという遠慮が生まれ、言い合いはできません。例えば、40〜50代の社員にとって、転職してきた新メンバーが数歳しか離れていない場合などは特にそうでしょう。しかし、自分より一回りも二回りも年下であれば、立場や力量の差が明白すぎて、逆に素直な直言や対等なやり取りが可能になりのです。
このようにベテランと若手が侃々諤々(かんかんがくがく)のやり取りをして、事情を知らない人が見るとハラハラするような場面でも、実際に若手はそのベテランから可愛がられているだけといケースがあります。もちろんパワハラにはなりません。パワハラは、究極的には、関係性の問題で、その関係性の中でお互いが納得していればハラスメントにはならないからです。







