プライベートでも稲刈りのボランティア活動に参加しているという河原田社長。見事な手際でサクサクと稲刈りを進める。
刈った稲を藁で結ぶところまでが稲刈りの一連の作業だ。ほとんどの株主が初体験だが、NPO法人の方の指導によりすぐにできるように。株主同士でもコツを教え合い、だんだんと作業スピードが上がっていく。一方で、20代の筆者は慣れない農作業に苦戦。数十分続けただけで、額に汗が浮かんできた。今は機械で稲刈りを行う農家がほとんどだと思うが、毎年大きな労力をかけてお米をつくる農家の方への感謝が湧いてくる。河原田社長や社員も株主に交ざって稲刈りを行い、1時間半ほどかけて稲刈りが終了。
次に、藁で結んだ稲を木製のはしご状の道具に掛け天日干しする、「稲架掛け(はさかけ)」と呼ばれる工程を行う。現在は機械で稲の乾燥を行うことがほとんどで、この稲架掛けは昔ならではの伝統的な手法だという。稲架掛けが終わったところで稲刈り体験は終了。昼食会場に戻ると、なんとおにぎりの用意が! 疲れきった体にお米のエネルギーが染みわたる。最後にはお土産の配布もあり、株主は大満足の一日となった。
稲架掛けの様子。子どもも一緒になって作業を行う。結び方が雑な稲はここでバラバラになってしまい、参加者から悲鳴があがる。
社員と気軽に会話できる貴重な機会
企業への理解も愛着も深まる
この米作り体験の発案者である河原田社長は「自分の手で春に苗を植え、育った稲を秋に収穫するというのは中々できない体験。米作りの大変さを体感することで、普段食べているお米への価値観も変わる」とその意義を語る。親子で参加した株主は「年齢制限がなく、子どもと一緒に参加できるところがうれしい。息子に農作業を経験させたかった」と参加のきっかけを話してくれた。
今回のイベントでは社長をはじめ多くの社員が参加し、株主と和やかに会話していたことが印象的だった。ある株主は「社長と気軽に話せるところが魅力。春の田植えの時に会話したことを社長が覚えていて、今日も声をかけてくれた」という。筆者も取材とは別に、ヤマタネの社員や株主と様々な世間話をした。当然初めて会う人ばかりだが、一緒に農作業を行うことで自然と距離感が縮まる感覚があった。
株主が企業側と直接コミュニケーションをとれる機会は少ない。株主総会やIR説明会といった機会でも、株主が質問し、経営陣が答えるという堅苦しいワンターンのやり取りがほとんどだ。一方で、今回のようなイベントでは株主と社員がどちらともなく話しかけ、自然とコミュニケーションが広がる。企業についての話でも、もちろんそれ以外のたわいもない話でもいい。そうして、企業への理解が深まったり、社長や社員の人柄を知ることで企業への愛着が湧いたりする点が、“体験型”優待の何よりの魅力だ。
個人のファン株主の獲得が狙い
株主限定イベントが多数開催
体験型の株主優待・株主限定イベントを提供する企業は他にもある。近年、株主持ち合いの解消を背景に、多くの企業が個人の“ファン株主”の獲得に力を入れており、その一環でもある。例えば、明治ホールディングス(2269)は全国各地の工場で見学会を実施。製造ラインを見学できる。日本航空(9201)は施設見学会を定期的に実施する。普段は社員しか立ち入れない施設を見ることができる貴重な機会。過去には航空機を間近で見られる格納庫見学会を実施したこともあった。ファン株主にはたまらない機会だ。
下の表で紹介するイベントはいずれも抽選制。100株の保有で応募できるものもある。普段は見えない企業の取組みや雰囲気がわかるチャンスなので、ぜひ参加してほしい。
本記事は2025年11月13日時点で知りうる情報を元に作成しております。本記事、本記事に登場する情報元を利用してのいかなる損害等について出版社、取材・制作協力者は一切の責任を負いません。投資は自己責任において行ってください。








