ナイキ復活の一手、超厚底のランニングシューズナイキのエリオット・ヒルCEOは自社の主力事業をアスリート中心に戻すシフトを進めている
Clayton Cotterell for WSJ

 米スポーツ用品大手ナイキのエリオット・ヒル最高経営責任者(CEO)は、イノベーション競争のリーダーの座を奪還することを目指している。同社史上最も厚底のランニングシューズが、その目標を達成するモデルになるかもしれないと同氏は言う。

 現在購入できるランニング用スニーカーの中で最もかかと部分が高く、ソールの厚さが55ミリある「ボメロ・プレミアム」(230ドル、日本では税込み2万9700円)は、先月から店頭に並んでいる。ヒル氏は、最高級のクッション性を誇るこのシューズの開発過程に注目しており、社内の手本になると考えている。通常1年半かかるところを約8カ月で完成させたからだ。

「スピードアップの好機だ」とヒル氏は語る。ナイキに長年勤務したヒル氏は引退していたが、1年余り前に共同創業者のフィル・ナイト氏に呼び戻された。ナイキの事業立て直しを指揮するためだ。

 スピードアップは、ナイキ復活のために極めて重要だ。同社は半世紀以上前、ランニング用品を中心にブランドを確立した。だが近年はオンやホカなどの新興ライバル勢に押されて人気が低下し、その一方で「エアジョーダン」シリーズなどの定番商品に頼りすぎている。2024年10月のCEO就任初日、ヒル氏は室内を埋め尽くす従業員らに対し、ナイキは窮地に立たされていると伝えた。

「当社のライバルも、そしてさらに重要なことに消費者も、ただ手をこまねいてわれわれを待っているわけではない」。ヒル氏は当時こう告げた。