日本成長戦略会議の初会合で発言する高市早苗首相(右端)。左から2人目は城内実日本成長戦略担当相日本成長戦略会議の初会合で発言する高市早苗首相(右端)。左から2人目は城内実日本成長戦略担当相=11月10日、首相官邸 Photo:JIJI

「危機管理投資」は成長戦略たり得るか
潜在成長力引き上げは人的資本・技術強化で

 高市早苗政権は「強い経済」実現を掲げるが、経済政策の最大の問題は本質的な成長戦略が欠如していることだ。

 財政拡大や金融緩和といったマクロ的刺激策は取られるだろう。しかし、それは短期的な需要を支えるものであって、長期的に国の生産力を高めるための政策ではない。

 重要なのはマクロ的な政策ではなく、構造的な政策であり、成長戦略とは「潜在成長率を高めるために、人的資本と技術、そして制度を強化する中長期政策」だ。

 高市首相は、国会の所信表明などで、「危機管理投資」を成長戦略の柱に挙げ、それを具体化するために、首相をトップに、全大臣が参加する「日本成長戦略本部」を11月4日に立ち上げた。

 AI・半導体や造船、デジタルサイバーセキュリティーなど17の「戦略分野」についてそれぞれ担当相を決め、複数年度の予算措置で官民連携して投資を進めるという。

 だが戦略分野といっても、資源・エネルギー安全保障、防災・国土強靭化や防衛産業、マテリアル(重要鉱物資材)など、経済安全保障にウエートが置かれている印象で、高市成長戦略には、人的資本や技術強化などの3要素を包括する総合的なビジョンがない。日本経済の構造を変えていくという観点から見ると、大きな問題だ。

 高市首相は安倍政治の継承を掲げ、経済政策もアベノミクスを強く意識しているが、アベノミクスの最大の問題は、以上で述べた意味での成長戦略がなかったことだ。

 高市成長戦略もアベノミクスの“失敗”の轍を踏むことになりかねない。