衆院予算委員会で答弁する高市早苗首相衆院予算委員会で答弁する高市早苗首相=11月7日 Photo:SANKEI

日経平均株価は5万2000円の大台だが
2010年代と今はマクロ経済環境が激変

 参院選での与党惨敗以降の約3カ月の政治空白を経て、高市新政権が10月21日、ようやく発足したが、株式市場は、高市首相が掲げる「積極財政・緩和維持」路線の歓迎ムードが続く。

 日経平均株価は、米国株式市場がAIブームで活況が続いていることもあって、政権発足以降、上昇が加速、10月31日には終値で5万2411円34銭と史上最高値を3日連続で更新し、初めて5万2000円台に乗せた。11月に入り、調整の動きもあるが、活況の基調は変わっていない。

 新政権の経済財政運営は日本経済の再生につながるのか。

 低い支持率に悩んだ岸田・石破政権だったが、筆者の認識では、経済の長期停滞の大きな原因だった慢性デフレからの完全脱却に向けて、「賃金・物価の好循環形成」「実質賃金の持続的上昇」を中心課題に位置付けてきたことは正鵠を射ていた。

 その意味で、経済好循環・実質賃金上昇の前提条件になるという点で、新政権が「責任ある積極財政」「危機管理投資」をキーワードに経済成長重視を表明していることにはエールを送りたい。ただし、仮にアベノミクスの再現を目指しているのならば問題含みだ。なぜなら、2010年代と2020年代では、マクロ経済環境が激変しているからだ。

 アベノミクス時代と違って、今は人手不足が深刻化している。供給力のネックから、財政拡張などによる需要拡大は投資増に十分つながらず、むしろインフレを助長する。

 高市首相は、労働時間規制の見直しを対応策の一つとして表明しているが、デジタル化の進展もあって、女性やシニアを中心に働ける時間、働きたい時間に働く、いわば、仕事だけに専念せず生活とバランスを取りながら働くという労働者が増えているなかで、安易な労働時間規制の緩和は、長時間労働が可能な一部の労働者に業務がますます集中して過重労働や労働力不足をかえって深刻化させかねないからだ。