誠実であろうとすると「謙虚」になれる理由

この「言動を一致させる」という視点で「誠実さ」を考えると、誠実であることの難しさにも気づかされます。特に、自己評価が高い人やノリで話してしまう人は、グッとくるかもしれません。

「言ったことはやる」「できないことは言わない」――これを徹底しようとすると、どうなるでしょうか。本当に「できること」だけを喋ろうとしたら、人間一人の能力でできることなど、たかが知れています。つまり、たいした約束はできないのです。結果として、無口になってしまいます。

「言動を一致させよう」と意識した瞬間、「自分は一人では、たいしたことができないな」「言えることなんて本当にないな」という事実に気づきます。これは、「誠実であろうとすること」が、そのまま「謙虚さ」につながるということです。

誠実な人は謙虚

誠実な人は謙虚です。自分が「何ができて、何ができないか」をよく分かっているため、余計なこと(できないこと)を言わないのです。

一方で、言動を一致させる気のない人は、やる気がなくても、とりあえず「ふかす(おおげさなことや威勢のいいことを言う)」わけです。「あんな考え方がある」「これもこうした方がいい」と。特に他人の批判は大好きですが、「じゃあ、あなたはできるのか?」と問われると、何もできていなかったりします。

誠実さがもたらすメリット:人間関係

このように、「言動の一致」という観点を持っておくと、人が見えるようになります。そして、自分が誠実であろうとすることで、謙虚に振る舞えるようになります。この定義における「誠実さ」は、非常に大事なポイントだと考えています。

誠実であることのメリットは他にもあります。それは、「自分の周りに誠実な人が集まってくる」ということです。誠実な人とは、言葉が信用できる人です。

もし、自分が「言ったことだけをやろう」と心がけていても、周りがそうでなかったら、そのグループにいるのが馬鹿馬鹿しくなってきます。

「不誠実な人」の決定的な特徴

一番簡単な指標は「時間の約束」です。例えば、「午後6時に待ち合わせしよう」と決めたとします。誠実な人は、午後6時のちょっと前に現地に到着しようとします。他人を待たせることに負い目を感じるからです。

しかし、なかには毎回遅刻するような人もいます。

●午後6時半頃になって、姿を見せないので連絡すると「ごめん、今から出る」
●約束の時刻に連絡があり、「あと5分で着く」(こういう場合の5分は、たいてい15分かかります)
●そもそも忘れていて「ごめん、今から行く」

周りにこんな人がいたら、どうでしょうか? その人がいるときに、自分が時間を守ることが馬鹿馬鹿しくなりますよね。その人は、他人の貴重な時間を奪っているという意識がないからです。

では、次からどうするか?「時刻通りに行かない」とか「その人とはもう交流しない」「遊ばないし、仕事の予定も立てない」ということになるかもしれません。そして、自分と同じように約束した時刻を守る人と仲良くしたいと思うでしょう。

つまり、誠実な人は、誠実な人と一緒に動くようになるのです。お互いが信用できるので、「何かやろう」となった時に話がトントン拍子に進みますし、楽しいことがスムーズに進みます。不誠実な人によって嫌な思いをしたり、被害を受けたりすることがなくなるのです。

誠実さは最強の生存戦略

「誠実であること」は、生きる戦略として最高です。

●自分自身が謙虚になれる
●人を見抜けるようになる
●信頼できる人間関係が構築できる

いろんな意味で、非常に良いことだと思います。

※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。