破産した(医)啓仁会が経営していた「城南病院」(都城市、東京商工リサーチ撮影)
公立病院の8割以上が赤字――。9月30日、総務省が衝撃的な2024(令和6)年度地方公営企業等決算を発表した。職員給与と材料費が高騰し、コスト上昇を吸収できずに赤字が続出したようだ。厳しい事業環境は民間の医療機関も同じだ。赤字とはいえ倒産の心配がない公立病院と違い、民間医療機関の経営悪化は存亡の危機に直結する。医療機関の倒産が過去最多に迫るペースで推移するなか、地域の医療格差が拡大している。(東京商工リサーチ情報部 増田和史)
医療機関の倒産件数は
過去最多を上回るペース
総務省によると、自治体などが運営する公立病院の2024年度決算は、83.3%が経常赤字だった。赤字額の合計は3952億円に達するが、利益悪化は2023年度以降が顕著だ。同年度はコロナ下の2019年度以来、4年ぶりに赤字に転落した。問題はその赤字額で、経常赤字額は過去最大の2055億円に達した。そして、2024年度の赤字幅はさらに拡大し、前年度の2倍近くに膨らんだ。
赤字の背景は、費用の増加に尽きる。黒字だった2年前の2021年度と比べると、売上高に相当する医業収益の合計は3637億円増えている。だが、一方で職員給与費は1818億円増加し、材料費も1118億円増えた。これに電気代、ガス代などのエネルギーコストも加わり、様々な運営費の上昇がのしかかる。
診療報酬が規定され、固定化された収入のもとでのコスト吸収には自ずと限界があり、こうしたシワ寄せが表面化したのは必然でもあった。まさに物価高、人件費上昇、人手不足に翻弄(ほんろう)される医療現場を映している。
民間の医療機関も同じ環境悪化にさらされている。公立病院の赤字拡大を裏付けるように、各地で民間医療機関の倒産が右肩上がりで増えている。







