落ち込む医師写真はイメージです Photo:PIXTA

2024年の診療所(病床数19床以下)経営事業者の倒産が過去最多を更新した。12月には医療脱毛大手の「アリシアクリニック」を運営する医療法人美実会(東京都港区、負債72億9500万円)と一般社団法人八桜会(東京都港区、同51億7500万円)が破産。債権者数(被害者数)は約9万1800人にのぼり大きな話題となった。さらに今年1月には都内で医療脱毛の「トイトイトイクリニック」3院を展開していた医療法人社団雪焔会が突然、事業を停止した。医療脱毛クリニックを含めた診療所業界の厳しい経営環境について解説する。(帝国データバンク 情報統括部 情報取材課長 阿部成伸)

診療所の「倒産」「休業・廃業・解散」が
ともに過去最多を更新

 2024年の診療所(病床数19床以下)経営事業者の倒産(法的整理、負債1000万円以上)が31件となって過去最多を更新した。これまでの最多は2007年の27件だった。

 同年の飲食店経営事業者の倒産(894件で過去最多)などと比べると、「年間31件は非常に少なく、影響も限定的」と考える人は少なくないようだが、そもそも医療機関は一般企業と違って「公共性が高い」「景気に左右されない」などの理由から、過去から他の業種と比べて倒産件数が少ない業種となっていた。それがここにきて急増している。

 倒産だけでなく、休業、廃業、解散も同じ動きを見せている。2024年の診療所経営事業者の休業、廃業、解散は587件となり、最多となっていた2023年(513件)を上回って、こちらも過去最多を更新した。10年前(2014年=271件)と比べて2.2倍、20年前(2004年=90件)と比べて6.5倍に増えている。

 休業、廃業、解散は、原則として借金を完済して事業を停止するので取引先や金融機関には未回収金が発生しない(倒産は借金を完済できないため裁判所が仲介)。

 そうしたこともあり、倒産と比べて注目度は低いと感じるが、時間の経過とともに爆発的に増えていく可能性があるので今後は注意が必要だ。増加していく最大の要因は経営者の高齢化にある。