相次ぐ事業所の開設で、2019年3月期に約12億円だった医業収益は、2024年3月期には約40億円を突破し、業容を拡大した。だが、急速な拡大で設備投資もかさみ、金融債務は年間売上高を上回っていた。そして、ここに人件費や材料代などの経費負担が襲う。2023年3月期から2期連続で最終赤字を強いられ、資金繰りが悪化した。

 このほか、福慈会のグループで傘下の(医)和伸会(名古屋市)と(医)社団御幸会(熊本市)もそれぞれ連鎖的に行き詰まり、破産開始決定を受けた。グループ3社の負債合計は117億2800万円にのぼる大型倒産となった。なお、それぞれの法人が運営していた施設の一部については別法人が引き継ぎ、サービスを継続している。

地域の基幹病院でも
相次ぐ経営破綻

 地域医療を担ってきた医療機関でも経営破綻が相次ぐ。長崎市内で「千綿病院」を経営していた(医)誠仁会は5月、負債約7億4000万円を抱えて長崎地裁から破産開始決定を受けた。開業は1888(明治21)年にさかのぼる歴史ある病院で、市内東部地区の医療拠点になっていた。一般病床56床を備え、診療科目は内科、外科、整形外科、循環器内科などで、救急医療にも対応。居宅介護支援事業としてケアステーションも運営していた。

 ただ、利益面では2023年3月期以降、赤字を計上して債務超過に転落した。このため、2025年2月末での閉院を決断し、入院患者の転院先確保を進めたうえで破産を申請した。

 長崎県内では昨年6月にも、佐世保市で「杏林病院」を運営していた(医)篤信会が負債11億7000万円を抱えて破産し、大きな話題となった。

 同病院は病床数180床を誇り、内科や外科、整形外科などの診療科を揃え、救急病院にも指定されていた。コロナ禍の院内クラスターの発生や、経営悪化で2023年3月期に1億円を超える赤字を計上していた。その後も業況は回復せず、債務超過に転落した。突然の破産で、地元医師会や近隣エリアの医療機関が協力して入院や外来患者の転院措置が進められたが、救急対応の大型病院の閉院は地域に暗い影を落とした。