このほか、宮崎県都城市で消化器内科、外科、リハビリテーション科を備えた「城南病院」(病床数99床)の(医)啓仁会(2月破産、負債11億8000万円)、兵庫県たつの市で「八重垣病院」や介護老人保健施設を運営していた(医)社団景珠会(7月破産、負債5億円)も倒産に追い込まれた。地方の少子高齢化や空洞化は、都会から見る以上に深刻だ。地域医療を担ってきた基幹病院の相次ぐ倒産、閉院は、地域住民にとって死活問題にもなっている。

迫る倒産増加の危機
診療報酬改定への期待と課題

 最近の医療機関の破綻事例の多くに共通する点が、2023年度以降の巨額の連続赤字の計上と債務超過だ。アフターコロナの景気回復に反比例するように、人件費の負担、電気代、備品・消耗品などの費用増にも見舞われ、資金繰りがつかなくなった。

 一方で、「医療機関はもともと理事長への依存度が高く、ワンマン体質になりがち。収益性や財務改善の意識は二の次で、どんぶり勘定も多い」(金融機関の融資担当)と、旧態依然の経営体質を指摘する声もある。

 理事長・院長の高齢化、医師や看護師の不足、設備の老朽化への対応など、深刻な課題を水面下で抱えたまま長年経営を続けてきた医療機関も多い。はた目には「立派な病院」、「偉い先生」とみられる医療機関も、既得権益に拘ると事業環境の悪化に抗えず倒産予備軍に陥る可能性もある。

 11月に入り、政府は今年度補正予算で医療機関や介護施設の経営安定化に向けた補助金支援の検討に入っていることがわかった。そして、避けて通れないのが、2年に一度定められる診療報酬の改定だ。各病院などで構成される協会や団体の多くが、次年度の診療改定率は10%超の上昇が不可欠との認識を示している。

 改定は結果的に国民負担の増加に繋がる。物価高対策を第一に掲げる政権は、四面楚歌(そか)の難しい舵取りが続く。

 医療業務のコストと診療報酬のバランスが崩れ、いったん採算悪化に陥ると抜け出すのは至難の業だ。医療の空白地帯を増やさないためにも、診療報酬の見直しやM&Aによる事業承継の推進など、医療機関の存続に向けた実効的な取り組みが求められる。