チームで何かを進めるとき、「協力をお願いしてもいまいち動いてくれない」「巻き込みたいのに温度差がある」――そんな経験はありませんか。一方で、特別な権限があるわけでもないのに、周囲が自然と力を貸してくれる人もいます。その違いを生むのは、話のうまさでも押しの強さでもなく、お願いするときに“あるポイント”を大事にしているかどうかです。
人を巻き込む際、いったい何を大事にすればいいのか? 400以上のチームを見てわかった「仲間と協力するのがうまい人」の共通点をまとめた書籍『チームプレーの天才』(沢渡あまね・下總良則著、ダイヤモンド社刊)から、そのコツを紹介します。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
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「人を巻き込む」ときに大事なこと
人を巻き込む際は、必要な情報を伝えて「納得」によって参画してもらいます。
そのためには「ものがたり」、すなわちストーリーがカギとなります。
ストーリーとは、なぜあなた(たち)がそのテーマやプロジェクトに取り組んでいるかを示す背景であり、いきさつであり、思いです。
自分たちのストーリーを描くことが、リーダーとチームに「らしさ」をもたらし、相手に「なぜ」「どのような形で」そこに関わってほしいのかを考えるための問いになります。
「3つのストーリー」を大事にする
とはいえ、「自分(たち)のストーリー」を一方的に語っているだけではうまくいかない。
「相手のストーリー」も尊重し、新たな「共に創るストーリー」を一緒に紡ぐことで、ものごとを前に進めましょう。それぞれ説明すると、次のようになります。
・自分のストーリー
その活動やプロジェクトを推進するリーダーや発起人、またはその組織(会社など)のきっかけ、いきさつ、思いなど。
会社から「やれ」と言われて進めるプロジェクトであったとしても「なぜ、自分がその役割を引き受けようと思ったか」「自分なりにどこに共感したか」「自分として、どんな答えを出していきたいのか」などを考え言葉にしてみましょう。それは、立派な自分のストーリーです。
・相手のストーリー
そのプロジェクトのオーナー(指示者)であったり、参画する(または巻き込もうとしている)メンバーや他者のストーリーです。
その人たちの歩み、生い立ち、興味関心、思い、日々大切にしているもの、ライフスタイル、制約条件など。
・共に創るストーリー
その活動やプロジェクトで、相手の力も借りながらどんなストーリーをここから紡いでいくか。どんな道のりを共に歩み、どんな世界を創っていくか。
うまく共創できる人たちは、自分と相手、双方の状態(外部環境、内部環境、制約条件、意欲や能力など)をよく観察し、お互いのストーリーを描いて、対話を重ねながら新たなストーリーを合意形成してものごとを進めていきます。
お互いが望む「新しいストーリー」を考える
たとえば人事部のあなたが、営業部を巻き込んで、動画を活用した新たな自社PR活動にチャレンジしたいと考えているとしましょう。
あなたは「社員に出演してもらうことで、自社で働くイメージを伝え、興味を持ってくれる人を増やしたい」と思っている。
しかし、それはあなたの都合。
営業部は「忙しいのに、採用活動に協力なんてしていられない」と思うかもしれません。
「良い採用をしたい」と「売上を上げたい」、あなたと営業部の人たちはそれぞれ別のストーリーを生きているのですから当然です。
ならば、お互いのストーリーが混ざり合うストーリーを描きましょう。
「採用」では響かなくても、「それぞれの営業が担当している商品をさりげなく紹介できる」としたらどうでしょう。「それなら売上にもつながるかも」と、営業部の心も動くかもしれません。
「だったら大学生にも興味を持ってもらえそうな商品を扱っている営業担当者に出演してもらおう」と、積極的に提案してくれるかもしれない。
これが、お互いのストーリーが合致し、共に新しいストーリーを紡ぎ出した状態です。
誰も損しないし、傷つかないでしょう。
(本稿は、書籍『チームプレーの天才』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です。書籍では、他者との仕事をラクにする具体的な技術を紹介しています)






