「あの人がいるチームは、いつも成果が出る」――。そんな“頼られる存在”には強い共通点があります。それは、特別なスキルでもリーダーシップでもなく、日々のちょっとした習慣。本人は意識していなくても、その振る舞いによって自然と協力し合える空気が生まれているのです。400以上の組織やチームを見てきた組織開発の専門家が「誰とでもうまく仕事を進められる人がやっていること」をまとめた書籍『チームプレーの天才』(沢渡あまね・下總良則著、ダイヤモンド社刊)から、そのヒントを紹介します。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
「体験」が、チームを前に進める
目標となる姿をメンバーと一緒に見に行く。
目指しているものの試作品を作ってみる。
社外の人と関わる場に皆で足を運んでみる。
このような「体験」は、チームの一体感を高めるのはもちろん、メンバーのビジョンに対する手応えや新たな学び、発見をももたらし、それがチームのさらなる推進力になります。
体験「しただけ」で終わる人たち
しかし、個人やチームがどんなに良い体験をしても、「へえ、良かったね」「面白かったね」「いい勉強になったね」で流してしまっては、その意味を減じてしまいます。
また、「学ぶものがなかった」「時間の無駄だった」など、一方的な決めつけや斜に構えたものの見方で、せっかくの体験の意味を台無しにしてしまう人たちもいます。
その体験を「チームの資産」に変える習慣
体験を個人のフロー(その場で流れて行ってしまう情報など)で流さずに、組織やチームのストック(蓄積・引き出し・活用可能な資産)に変えていく。
そのためには「振り返り」によって体験を意味と価値に変換し、メンバーと共有するプロセスが不可欠です。
同じ体験をした当事者同士での振り返りは、共創関係をより強固にします。
振り返って言葉にすることで、「同じ景色を見た体験」「同じ釜の飯を食った体験」がより深く心に刻まれるからです。
チームでも個人でも、「体験」をしたら必ず「振り返る」。この2つの行動をセットにしましょう。
(本稿は、書籍『チームプレーの天才』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です。書籍では、他者との仕事をラクにする具体的な93の技術を紹介しています)
■書籍のご紹介
誰とでもうまく仕事を進められる人は、
何をしているのか?
1人では実現できない
最高の成果の導き方!!
発売たちまち、「読者からの声」が続々と届いています!
この本は、現代の複雑なビジネス環境において他者との協力に課題を感じている方におすすめの本です。
プロジェクトを進めていく上で忘れてはいけないことを示してくれる本でした。
チームメンバーにも本書を勧めて、より成果を出すチームにしていきたいと感じました。
仕事をしていくうえで不可欠な人とのかかわり方についても良い気づきが得られる本
チームで成果を出したい人はもちろん、人間関係に悩んでいる人にも刺さる内容です。

「ひとり」で頑張るのはしんどい。
でも、「他者」と協力するのも億劫……。
本書は、そんな葛藤を抱える人のための本です。
近年、チームで成果を出すよう求められるシーンが増えてきました。変化の激しい時代において、自分たちの専門性や意欲だけでは、ひいては従来の「勝ちパターン」では答えを出すことができない。よって他者と協力して答えや結果を出すやり方にシフトする。その流れは必然とも言えます。
チームの仲間、社外の取引先、そして、これまで関係のなかった未知なる仲間たち。幅広く他者と手を組み、いままでとは異なる答えを出す。それができない組織や人は、イノベーションはおろか現状維持さえも厳しいでしょう。
その時代の流れの中で、脚光を浴び始めたある言葉があります。
「共創」です。
共に創ると書いて、共創。この言葉をビジョンやスローガンに掲げる企業が増えてきました。
一方で、共創は「言うは易く行うは難し」の典型。なかなか思うようには進みません。「共創できるチーム、組織にしていきたい。しかし、うまくいかない……」。企業の経営者や部門長、地方自治体の長などから、このような相談を、本書の著者たちは日々受けています。
そんな人たちに向けて、他者と「共創」関係になり、一緒に結果を出すための方法を伝えるのが本書です。組織開発の専門家である沢渡あまねさんと、デザイン経営の研究者・実務家である下總良則さんが、これまで400以上の組織やチームを見てきたなかで気づいた「他者と協力して結果を出せる人たちがやっていること」を、具体的な93のコツとして紹介します。
リーダーやマネジャーにかぎらず、いちメンバーでも実践できる内容です。ひとつでも実践してもらえれば、仕事仲間とのコミュニケーションが変わり、関係性が変わり、結果も変わってくるでしょう。
他者と協力して仕事の結果を出したい人にとって、具体的な学びの多い一冊です。
本書はこんな人におすすめです
「社内でチームの一員として仕事している」
「部署横断プロジェクトのメンバーに選ばれた」
「取引先や協力会社など社外の人と仕事をしている」
「社外でイベントやコミュニティの運営に関わっている」
「地域や行政などと協力する必要がある」
本書はこんな悩みを解決します
「意見が食い違ってぶつかってしまう……」
「経験や価値観がバラバラでまとまらない……」
「意欲を持って取り組んでもらえない……」
「お金を払っているのに、ちゃんとやってくれない……」
「前進している手応えを感じられない……」
仲間と協力し合うための93のコツを紹介!!
第1章「ゴールイメージ」を合わせる――見ている「景色」がバラバラになっていないか?
第2章「動機」に寄り添う――自分たちの都合ややり方を押し付けていないか?
第3章「ストーリー」を描く――自分たちだけで盛り上がって「孤立」していないか?
第4章「体験」を創る――「本当にできるの?」と不安になっていないか?
第5章「振り返り」を習慣にする――「勉強になった」「大変だった」で終わりにしていないか?
第6章「余白」を大切にする――いつも「成果」を出すことに追われていないか?
第7章「能力」を補う――いまのメンバーのままで走りきれるだろうか?
第8章「キャリア」のイメージをもつ――自分やメンバーの「その後」を描けているか?
第9章「変化・成長」を実感する――目先の評価に惑わされて「成長」を見過ごしていないか?
■著者プロフィール
沢渡あまね(さわたり・あまね)
作家/企業顧問(組織開発&ワークスタイル変革)。あまねキャリア株式会社CEO/一般社団法人ダム際ワーキング協会代表。プロティアン・キャリア協会アンバサダー。磐田市“学び×共創”アンバサダー。『越境学習の聖地・浜松』『あいしずHR』『読書ワーケーション』主宰。大手自動車会社、NTT データなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。主な著書は『組織の体質を現場から変える100の方法』(ダイヤモンド社)、『新時代を生き抜く越境思考』『EXジャーニー』『バリューサイクル・マネジメント』『職場の問題地図』(いずれも技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など。趣味はダムめぐり。#ダム際ワーキング 推進者。
下總良則(しもうさ・よしのり)
東北工業大学准教授(デザイン経営分野)/usadesign代表/一般社団法人 デザイン経営研究所 代表理事/一般社団法人RAC理事。多摩美術大学を卒業後、商品企画担当者・プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナーを経て、usadesignとして独立。フリーランスデザイナーとして、世界シェア第3位の広告代理店ピュブリシス傘下ビーコンコミュニケーションズや、ネクストユニコーンをはじめとするスタートアップ企業にジョインし、「デザインと経営学」をテーマに活動を広げる。ニューヨークで伝統ある国際グラフィックデザインアワード「Graphis Design Award」にて2023年に金賞を受賞し、ロゴ部門単独では世界第2位、日本からのエントリーの中では第1位を獲得。このほか、日本高等教育開発協会が審査した「コロナ禍でのICTを活用した新しい授業公募」にて、唯一の審査会全会一致事例として最優秀事例に採択され、日本の私立大学の中で第1位を獲得するなど、受賞多数。グロービス経営大学院修了MBA取得。著書に『インサイトブースト 経営戦略の効果を底上げするブランドデザインの基本』(ハガツサ)がある。