復帰した人が再び同じストレスにさらされ、また限界を迎えてしまう可能性はないのか。

 結局のところ、職場の環境や働き方そのものが変わらなければ、どれだけ復職の仕組みを整えても、同じ問題が繰り返されるだけだろう。

ストレスが積み重なると
管理職すら辞めていくことに

 2015年の時点で、ギャラップ社は仕事による過度なストレスや疲労が、ドイツ経済に年間約90億ユーロもの損失を生じさせていると推定していた。

 そして、これは決してドイツだけの問題ではない。世界中で同じような傾向が見られ、特にコロナによるパンデミック以降、その影響はさらに深刻になっている。

 また、こうした問題は現場の従業員だけでなく、管理職にも広がっていることがデロイト社の調査で明らかになった。調査によると、管理職の3分の2以上が、仕事のストレスを理由に退職を考えたことがあるという。

 つまり、企業のリーダー層でさえ、重いプレッシャーに耐えきれず、仕事を続けていくべきか真剣に考えざるをえない状況にあるのだ。

 ドイツのあるクライアントは、当時の状況をこう語った。

「誰と話しても、仕事の負担が大きすぎるとか、あの人はもう限界だとか、病欠している人が多いとか、そんな話ばかり。常に不満が飛び交い、あれが足りない、これが必要だと訴える声が尽きることはありませんでした。

 前向きな意見や建設的な議論が生まれるわけもなく、ただプレッシャーに押しつぶされそうな空気だけが漂っていましたね。そして、1人、また1人と、メンバーが次々に倒れていくような、そんな厳しい状況でした」

メールやグループチャットに
忙殺されるビジネスパーソン

 このように、組織全体が負のスパイラルに陥ってしまうことは決して珍しくない。では、この状況から抜け出すにはどうすればよいのだろうか。

 さまざまな要因が考えられるが、その1つに「情報量の爆発的な増加」があることは間違いない。

 ある調査によると、1980年代半ばにおいて、人が1日に受けとる情報量は新聞紙40枚分ほどだったが、2007年にはそれが4倍以上に増えたというデータがある。