近年においてそれが減少しているとは考えにくく、むしろ加速度的に増えているはずだ。

 問題は、受けとる情報が増えても、それを処理する時間が増えていないことだ。情報の多くは、広告やバイラル動画など、必ずしもすぐに対応が必要なものではない。

 しかし、その中には、CC付きのメールや社内のグループチャット、SNSのDMなど、「何らかの対応をすべきかもしれない」と感じさせる情報も紛れ込んでしまっている。

 こうしたデジタルの情報洪水に対処していくには、何らかの戦略が必要だ。何の対策も取らなければ、その波に押し流されてしまう。気づけば、朝から晩までメールをチェックしつづけ、会議にも集中できず、目の前の人との会話よりもオンラインでのやり取りを優先してしまっている。

 そして、「どの情報に対応すべきだろうか」と考えつづけることが大きなストレスとなり、やがては心身ともに疲れ切っていく。

情報量自体を減らさないと
ストレスは軽減できない

 一部の人は、「個人と仕事でアカウントを分けよう」「Zoomはこのコミュニティ用、Teamsは会社用にしよう」といった方法でなんとか対処しようとする。

 しかし、ツールを分けたとしても、受けとる情報の量自体が減るわけではない。むしろ、使うツールが増えたことで管理が複雑になり、かえって負担が大きくなってしまう。

 そのような日々が続き、それが当たり前になってしまうと、事態はさらに悪化していく。家族と十分に時間を過ごせないことも、友人の悩みに耳を傾けられないことも、地域でのボランティア活動に参加できないことも、すべて「仕事が忙しいからしょうがないな」で納得してしまう。

 優先順位をうまくつけられなくなり、新しい情報や急ぎの連絡に振り回されるうちに、本当に大事なものがどんどん見えなくなっていく。

 そして、このようにコントロールが効かない状態では、「いま何をすべきか」を把握できず、他の人からの「すぐに対応してほしい」という頼みに安易に飛びついてしまう。