2025年11月10日、エルサレムのイスラエル議会(クネセト)本会議で演説するベンヤミン・ネタニヤフ首相 Photo:EPA=JIJI
イスラム組織ハマスとの停戦に向けた和平案に合意した、イスラエルのネタニヤフ首相。ですが、ハマスに対するイスラエルのシナリオは、停戦合意の前も後も変わっていないと佐藤氏は言います。モサド(イスラエル諜報特務庁)の元幹部に聞いた、国民の本音と、戦争が続く理由とは――。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)
国際的に注目を集めた映画
「ネタニヤフ調書 汚職と戦争」
「ネタニヤフ調書 汚職と戦争」という映画が、11月8日から全国で劇場公開されています。イスラエルで制作されたこのドキュメンタリーを見ると、ガザ地区の停戦合意が履行されない理由がよく分かります。
贈収賄や背任の容疑で刑事裁判にかけられているベンヤミン・ネタニヤフ首相本人に加えて、夫人と息子、イスラエルの元首相や国内諜報機関シンベトの元長官、ネタニヤフ氏の元広報担当などの関係者を取り調べた実際の画像が流出して、作られた映画なのです。おそらく捜査当局が、ネタニヤフ政権を倒そうと意図的に流したのでしょう。
〈本国では上映禁止、親イスラエルの米国でも劇場公開されていないにも関わらず、国際的に注目を集め、昨年度のアカデミー賞ショートリストに選出されるなど大きな話題を呼んだ〉(映画公式HP)
ネタニヤフ氏が
恐れている映画が公開
ショートリストというのは、最終ノミネートの候補作品のことです。この映画を国内で上映させないのは、ネタニヤフ氏がこの映画を恐れているからだといえます。
ドナルド・トランプ米大統領とネタニヤフ氏は、ホワイトハウスで9月29日に会談し、イスラム組織ハマスとの停戦に向けた和平案に合意しました。ハマスが拘束しているイスラエル人の人質全員を解放するのに合わせ、イスラエル軍はガザ地区内の一定のラインまで後退し、その後段階的に全軍が撤退する、という内容です。







