「ユダヤ教とイスラム教」「イスラエルとパレスチナ」どちらもむごい仕打ち、それでも報復を望まぬ声【池上彰・増田ユリヤ】イスラエル軍が大規模な攻撃を再開したガザ地区で3月24日、ジャーナリスト2人が死亡した。戦闘が始まった2023年10月以降、多数のジャーナリストがガザ地区で攻撃を受けて命を落としている Photo:AFP=JIJI

娘を殺されても、憎むより
「暴力の応酬を止めたい」

増田 停戦合意を一方的に破り、3月18日にガザで大規模な戦闘を再開したイスラエル。その攻撃で、「朝日新聞」通信員としてガザの模様を伝えていたムハンマド・マンスールさんが3月24日に死亡しました。マンスールさんの書いた記事が掲載されることが彼の無事を伝えてもいた。こうした事態となり、同じジャーナリストとしてむなしさと悔しさ、そして無力感を感じています。

池上 イスラエルのネタニヤフ首相は「ガザでの作戦を全面的に再開する」として、その責任を人質を解放しないハマスに負わせていますが、戦闘の再開でむしろ人質解放は困難になったとの見方もあります。(編集部注:3月末時点。以下、同じ)

増田 攻撃再開からの2週間余りで、死者の数は1000人を超えています。子どもも多数含まれる。ネタニヤフ首相は攻撃の手を止めるつもりはないどころか、むしろ「ハマスへの軍事圧力を強める」と主張しています。

池上 増田さんは2月にイスラエルを取材していますね。今となれば、奇跡的に停戦が成り立っていた時期でした。

増田 ハマスによる攻撃が行われた2023年10月7日に家族や友人が殺害された方々のお話を伺いました。娘とそのボーイフレンドを殺されたタミさんという女性は、「ハマスが憎い、ガザが憎いということではなく、とにかく今の暴力の応酬を止めなければならない」と話してくれました。

池上 家族を殺されれば誰しも恨みを抱き、復讐したいとさえ思うのが普通だけれど、強い女性なのですね。