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スカウトという仕事自体は違法ではないのに、なぜ彼らは繰り返し逮捕されてしまうのか。新宿歌舞伎町では、性風俗店への人材紹介が「公衆道徳上有害な業務」とみなされることで、職業安定法違反として処罰の対象になっている。たとえ風営法を守って営業している店の求人でも、紹介しただけで違法とされるのだ。そこには、法律の矛盾と「職業選択の自由」をめぐる深い問題が横たわっている。現場を知る弁護士が、その背景をわかりやすく解き明かす。※本稿は、弁護士の若林 翔『歌舞伎町弁護士』(小学館)の一部を抜粋・編集したものです。
留置場のスカウト会社社長に
差し入れた1冊の本
「パキスタンの子と同房になったんですよ。なんか面白そうな奴なんで、ガイドブックをお願いしてもいいですか?」
顔馴染みのスカウト会社の社長がまた捕まった。彼との付き合いは、もう10年以上になる。今回の容疑は職業安定法(職安法)に関連する違反行為だ。彼がまだ20代だった頃、私が初めて留置場に差し入れした1冊は、今でも覚えている。
留置場ではまともな食事もできないだろうから、せめて想像の世界でと考えて、美味そうな写真入りの料理エッセイ本を差し入れたのだ。
「先生、気持ちはありがたいんですけどね。ちょっと、そういうんじゃないんですよ」
若き日のスカウトは、私を励ますように言った。
「留置場にいるのに、食えないもん見たって、しょうがないじゃないですか。やたらと腹減るだけで嬉しくないっす。楽しいのじゃなくて、とにかく暗いのをお願いしますよ。戦争に行って両脚がフッ飛ばされた兵隊とか、親に虐待されていた子供の話とか」







