「あの子、(嫌疑が)盗みだったんですよ。最初は『喧嘩で……』とか調子よく言ってたんですけどね。喧嘩だったら気にしないですけど、手癖が悪いのは厳しいですね。だから、泥棒と痴漢は仲間にしません。やっぱり、義理人情がないと」

 現場のリアルに明るくない人たちは「スカウトが、女性たちを性風俗店に沈める」などとしばしば批判するが、歌舞伎町にいる多くのスカウトが行っているのは「性風俗店で働いた経験がない女性」を性風俗店に紹介するのではなく、「すでに性風俗店で働いている女性」を別の店に紹介するというビジネスが大半なのである。

 そのためスカウト会社は、どの性風俗店にも人材を紹介できる中立的な立場を取るのではなく、特定の性風俗店やチェーンと手を組み、彼らの店舗のために独占的に人材を送り込むビジネスモデルを選ぶことが多い。

道での声掛けを封じられ
頼りになるのはSNSや人脈

「だから気は遣いますよ。性風俗店に関するスカウト業務は、基本的にはアウト(違法)じゃないですか。けど、実際にはどの性風俗店もスカウト会社と組んでいるわけです。そういう状況の中で、トラブルが起こらないように、平和的に転職させなきゃならないっていう、その部分の難しさがありますね」

 スカウト社長が、とある風俗店に勤める女性の引き抜きにかかるとしよう。いや、そもそもどうやって、彼らはその候補者を見つけるのだろうか。

「それこそ、路上ですよね。風俗やってる子はだいたい見た目と雰囲気でわかるので、声掛けて。ただ、今は迷惑防止条例とかでギチギチにやられちゃって、道で声掛けるだけでアウトになっちゃうので、ネット経由も多いです。SNSで自分らから連絡する時もあるし、ちゃんとこっちの公式サイトもあるんで、そこに自分で連絡してくる子とかもいます。

 ただ一番はやっぱり、人脈です。狭い世界なんで、キャストの女の子たちも顔見知りだったりするんですよ。それで、今の店に不満がある子を紹介してもらったり、ホストからの紹介もありますね」