にもかかわらず、職業安定法第63条の規定について、裁判所は性風俗店での仕事を“有害な業務”であるとして、その紹介を違法とする判例を作り続けてきた。条文は以下の通り。
次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、これを1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する。
一 暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行い、又はこれらに従事したとき。
二 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集、募集情報等提供若しくは労働者の供給を行い、又はこれらに従事したとき。
風営法の届出をしていて、適法に営業している店やその従業員を有害な業務呼ばわりするのは、如何なものだろうか。
また、この職業安定法は、有害な業務の募集や募集情報などの提供も禁止している。
「募集」は、判例上は「積極的な勧誘行為」とされており、風俗店側がSNSのDMなどで転職希望のキャストに求人の声掛けをすることや、面接に来た人に対して、必要な説明以上に積極的に勧誘することも禁止されている。「募集情報等提供」には風俗の求人サイトなども含まれると考えられるため、これも禁止されている。
職業安定法違反を理由に
警察は逮捕できてしまう
このような職業安定法の規定からすると、性風俗店の営業において極めて重要な求人について、これまで行われてきた多くの求人方法が違法になってしまう。
風営法を守って適法に営業している風俗店についても、職業安定法違反を理由に警察が逮捕できるような状況にあるのだ。実際に、嫌がらせかのように、職業安定法を利用して、求人の際に積極的な勧誘をしたとして恣意(しい)的な逮捕がなされた事例もある。
「やっぱり、風俗のスカウトが一番儲かるっていうのはありますけど、でも、俺たちも大変ですからね。別に楽して稼いでいるわけじゃないのに、嫌われてばっかりで」
例のスカウト社長は言う。結局、留置場で同房だったパキスタン人を仲間にするのはやめたそうだ。







