再び八重垣神社へ
リヨがヘブンを訪ねてやって来た。
ヘブンに近づけないでと錦織に言い含められているので、トキは必死で家のなかに入れないように努める。
「今日はあいにく」「おひとりで散歩に」までは、ふつうのごまかしだが、「右のほうにいかれたと思います」「先生右利きですし」までいくと適当にも程がある。
ごまかされているのを知ってか知らずかトキに「一緒に来てほしい」と誘うリヨ。
「味方でしょ」「なら来てよー」とかなりなれなれしい。
トキは「一応どっちも味方したし、これでええんかなあ」とひとりで納得して、リヨに付いていくことにする。錦織に言われたようにヘブンに会わせないようにしつつ、リヨに同行する。確かにどっちにも味方したことになっている。
リヨはトキに言われたように右に向かう。
着いた先は八重垣神社。そこで彼女は恋占いを行う。リヨは「結果が悪かったときに当たり散らす相手がほしいじゃない」という理由でトキを誘ったのだ。
トキはリヨを見守るのはいいが、自分がやる気はさらさらない。
前にやったとき、その「結び目がほどけちゃった」からで、「こりごりといいますか」とやることを遠慮する。トキはあまり表に出さないが、銀二郎(寛一郎)とのことを引きずっているようだ。
リヨはひとりで、占いに挑戦。
ヘブンとの縁があるとしたら、池の遠くまで紙の船が進んでから沈むこと。
ここでもトキはどちらにも味方する。
「沈め沈め」「沈むな沈むな」とブードゥー人形に祈る。
そのうち「沈んで沈むな」になって……。
こんなふうに祈られたら、神様もブードゥー人形もどうしていいかわからないだろう。トキが、もうどうしていいかわからなくなっているのだと思う。
ブードゥー人形を強く握りしめ、目を大きくむき出す高石あかりの表情に切羽詰まったものを感じた。
ブードゥー人形のもとになっているブードゥー教は、ヘブンのモデル小泉八雲が研究していた宗教だった。制作統括の橋爪國臣さんはこのように語っている。
「実際、小泉八雲が松江にブードゥー人形を持ってきたかどうかは分かりません。けれど、小泉八雲が長く暮らしたニューオーリンズではブードゥー教が盛んで、彼はブードゥー教を調べたり取材したりしています。彼の研究資料は大量に残っていて、八雲の孫・小泉凡さんは『八雲はブードゥーが好きだったから』と言っていました。当時、ブードゥー教は白人と黒人の差別社会の中で偏見にさらされていた宗教で、危ない宗教のようにみなされていましたが、八雲は気にすることなく、ブードゥーの文化、音楽、祭りなどに興味をもって取材し、人形のことも書いているんです」
「ブードゥー人形の素材はいろいろあるのですが、日本の何かとつながるといいのではということで、藁(わら)人形のように藁で作りました。ブードゥー人形はハリウッド映画の影響からか、呪いの人形のようなイメージがありますが、ヘブンのセリフにもあるように、本来は願いを叶(かな)える幸せの人形でもあるんです。願いを叶えるので、良いことも悪いことも叶えるということなんです」









