日本人を対象とした研究では、下のグラフのように、少量のアルコール(1日1ドリンク)を飲み続けただけで、10年間における累積のがん発症リスクが5%上昇することが分かりました。
同書より転載 拡大画像表示
少量のお酒(1ドリンク)に相当するアルコールの量は、具体的に、日本酒1合(180ml)、ビール中瓶1本(500ml)、ウイスキー1杯(60ml)、そして、ワイン1杯(180ml)となります。これは決して多くはない量ですよね。ですから、「アルコールに安全な量はない」というのが、今の考え方です。
お酒で顔が赤くなる人は
少量の飲酒でも食道がんのリスクが7倍
では飲酒によって、どんな種類のがんが増えるのでしょうか?過去の研究によると、お酒によってリスクの高まることが確実、または強く疑われる5つのがんは、食道がん、肝臓がん、頭頸部がん(口腔がんや咽頭がんなど)、乳がん、そして、大腸がんです。
このうち、とくに要注意なのは食道がんで、お酒を飲むと顔が赤くなる人が飲酒を続けると、食道がんのリスクが非常に高くなります。
私もそうなのですが、日本人には、お酒を飲んだときに顔が赤くなる人が多いです。日本人のおよそ40%が、そのような体質だといわれています。そして、このような人たちは、アルコールを代謝する酵素(2型アルデヒド脱水素酵素:ALDH2)のはたらきが弱いことが分かっています。
この酵素のはたらきが弱い人がお酒を飲むと、アセトアルデヒドという発がん性のある物質の血液中の濃度が高まり、体の中に蓄積されることによって食道がんになりやすいのです。
実際に、2003年にCancer Epidemiology, Biomarkers&Preventionという雑誌に報告された論文によると、日本人男性を対象とした研究で、お酒を飲んだときに顔が赤くなる人(あるいは、過去に顔が赤くなっていた人)は、お酒を飲まない人に比べて、少量(週に1~9単位)飲む人ではおよそ7倍、中等量(週に9~18単位)飲む人では43倍、そして大量(週に18単位以上)に飲む人では73倍も食道がんのリスクが高くなっていました。







