地上波での「笑ってはいけない」や「すべらない話」といった切り口の特異性は、松本さんの企画力を語るうえで外せない実績です。そしてダウンタウンプラスの「実のない話」はそれと匹敵する特異な企画です。

 というのは「いくらでも面白い話ができる芸人」を8人集めて、逆に面白くない話をさせるのです。出演者は観客を笑わせてはいけない。しかし、つい言葉の端々で話を面白くさせてしまいがちではっとする。その緊張感だけで、つい視聴者も一緒に笑ってしまいます。チャンネルに加入していない人には伝わりにくい企画だと思いますが、とにかくその発想がとびぬけているのです。

 では、このような特異性を持たない後追いのタレントメディアはどのように立ち上がっていくのでしょうか?すぐに頭に浮かぶことがふたつあります。

 ひとつは後追いで立ち上がるチャンネルは、ひとまわり小ぶりになるだろうということです。

 ダウンタウンプラスの場合は、真っ先に一番強いコンテンツが独自チャンネルを立ち上げたから異例の50万という数字が集まったわけです。あとから立ち上げるチャンネルの規模は月額1100円なら5万人、月額550円で10万人あたりが狙える上限になるのではないでしょうか。

 もうひとつ思い浮かぶ前提条件は、テレビでたくさん使ってもらっているタレントは本格参入しづらいだろうということです。テレビから見れば競合になるわけですから、普通であれば、

「競合メディアを立ち上げる人はうちには出さないよ」

 という反応になるはずです。

 そのふたつの前提条件を考えると、これから起きる可能性があるのは次の2通りのシナリオだと思います。

 ひとつはあくまで推し活市場限定のチャンネル開設です。たとえばSnow Manがファンクラブ組織のサービスとして有料配信を開始して、ファンクラブ会費的な位置づけでサブスク料金を徴収する形。これであればテレビ局がぴりぴりするようなライバルとはいいづらいといえます。