『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第39回では、1つのヒットから始まる好循環について解説する。
新商品の大ヒットで「いい風が吹いてきた」
東京から地元・秋田に出張中の起業家・花岡拳。これまで鳴かず飛ばずだったTシャツ専門店「T-BOX」で出した新商品のTシャツが、販売初日から売れ行き好調だと、電話で報告を受ける。
加えて、プロボクサー時代の花岡の後援会会長から資金を得て、難航していた新店舗の出店計画も前進する。
「きたきた、いろんな運が…いい風吹いてきたぞ」
花岡の言葉のとおり、周囲が大きく動き出す。秋田の工場を取り仕切る旧友・木村ノブオ(ノブ)は、花岡のかつての同級生でもある妻・ヨーコ(陽子)が産気づいたと連絡を受け、病院へと走る。さらに会社からは、新商品が完売したという知らせを受ける。
東京に戻った花岡は、ラインアップの拡充をいったんストップ。レディースに特化した商品構成に振り切る戦略をとる。その戦略は見事に奏功し、新商品をきっかけにこれまでのさまざまなTシャツが売れていくという好循環を巻き起こすのだった。
追い風の正体「フライホイール効果」とは?
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
新商品がいきなり大ヒットし、既存のTシャツまで売れ始める——これは単なる偶然ではなく、世界的企業にもかつて起こっていた、好循環の萌芽(ほうが)と言える。
ビジネスの世界では「フライホイール効果」という概念がある。フライホイールとは、日本語では「はずみ車」などと呼ばれる車などに使われる装置のことだ。大きく重い機構だが、慣性の力を用いて少しずつ力を加えることで、加速度的な力を生み出すことができる。
そんなフライホイールのように、売上やブランド、口コミ、商品力といったものが少しずつ積み上がって回り始めれば、多少の逆風では止まらないほどの力を持つことができるというわけだ。
もともとは『ビジョナリー・カンパニー』シリーズの著者であるジム・コリンズが提唱した概念だが、アマゾンのジェフ・ベゾスが自社の成長をこれに当てはめて語ったことで、シリコンバレーの起業家らにも広がったのだという。
本来のフライホイール効果は、年単位の長い時間軸で語られる話ではあるのだが、アマゾンしかり、スターバックスしかり、「一点突破のヒット」から始まって巨大な輪を回していった企業と同じ“初動”とも言えるのではないか。
いよいよ「金を呼ぶ風」が吹いてきた花岡たちのT-BOX。しかしまたしても、ライバル・井川泰子が花岡たちに策を仕掛ける。
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク







