「転職しようか迷っている」と相談を受けたとき、ひきとめるか、背中を押すか、どう話すのが正解なのでしょうか? その後の人間関係に悪影響を与えない相談の答え方はあるのでしょうか?
『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』の著者・田中耕比古氏に、具体的な解決策を教えてもらいました。(構成/ダイヤモンド社・林拓馬)
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「やめたほうがいい」と否定と断定をしない
同僚から転職の相談を受けたときは、まず「否定しない」ことが大原則です。
基本姿勢はフラットに、もし傾けるならば、やや“肯定寄り”に構えます。
「あなたの人生を応援します」「あなたの判断を尊重します」という姿勢を明確にしましょう。最初に「いいんじゃない」「楽しそうじゃん」「いい話だね」などと言葉で示すだけで、相手は安心して話しやすくなります。
そして、こちらの考えに誘導しないことを徹底します。
懸念点があるのなら、それを伝えること自体は構いません。しかし、目的は“方向づけ”ではなく“考える材料の提供”です。
転職相談の場では、次のような枠組みで情報を整理すると、話がスムーズです。
①条件(年収・勤務地・制度)
②業務(役割・裁量・期待成果)
③成長(学習機会・評価の仕組み)
④働き方(残業・柔軟性)
⑤カルチャー(価値観・心理的安全性)
相手が「この点が気になる」と挙げた項目を一緒に深掘りし、転職判断の合理性を検証します。
結論を急がず、「判断に必要な事実をそろえる」ことに集中すると良いでしょう。
また、表現は丁寧に選びます。「やめた方がいい」といったネガティブな断定は避け、「良い点も悪い点もあるね。ここは、判断のしどころだね。」「とっても悩ましいところなので、いまの観点で一緒に整理しようか」といった、共に考える姿勢、相手の検討を支えるような言い回しを用いましょう。
相手が迷っている点について意見を求められた場合は、自らの体験や事実ベースで情報を補足しつつ、最終判断は相手に委ねるというスタンスを明確にします。
転職相談は結婚相談に似ています。誰かに婚約者の話をされたときに「その人はやめておけ」なんてことを軽々しく言ってしまうと、その二人が結婚した場合に「あいつは、結婚に反対した人」と永遠に記憶されてしまいます。
転職も同じです。相手の人生の大きな転換点で余計なことを言い過ぎると、この先の人間関係に長く影響します。
そのため、否定や断定を避け、尊重と材料提供で支えるに留めるのが最善です。
話の最後は「だいぶ考えるべきことが明確になったね。これで決められそう? もし、まだ迷っているポイントがあったら、いつでも声をかけてよ」と、支援する意思を示して締めます。
相手の意思決定を尊重し、背中を静かに支える姿勢が、同僚・友人との信頼を最も強くします。上手に転職相談に乗ることで、転職後も続くような良好な人間関係を築くように心がけましょう。
(本記事は『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』の著者・田中耕比古氏への取材をもとに作成しました)







