「その仕事って私がやんなきゃダメですか？」と言われたとき、頭のいいリーダーは何と言う？

「部下やメンバーに仕事を任せられるようになった」
「同期より先に出世することができた」
そんな感想が届いているのが、安藤広大氏の著書『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』『パーフェクトな意思決定』シリーズ四部作だ。これまで4500社以上の導入実績があるマネジメント法「識学」をもとに、ビジネスの現場で「数字に強くなれる」「仕組みで解決できる」という思考法を授ける本シリーズは、さまざまな企業・業界・個人から圧倒的な支持を集めている。この連載では、全ビジネスパーソンに必須の「リーダーシップ」のあり方について指南する。（構成／ダイヤモンド社・種岡健）

Photo: Adobe Stock

その仕事って、私がやんなきゃダメ？

　リーダーをしていると、部下からこんな一言を投げかけられる場面に遭遇します。

「その仕事って、私がやんなきゃダメですか？」

　この質問には、いくつもの感情が詰まっている場合があります。
　疲れ、苛立ち、やりたくなさ、そして時には本音と建前の混在。
　その真意を見極めず、表面だけを捉えてしまうと、リーダーとしての信頼を一気に失うことになりかねません。

「業務の内容」よりも「関係性の質」

　この問いは、単に業務分担の確認ではありません。

「なぜ私にこれを頼むのか」
「私の役割は何か」
「この仕事に意味はあるのか」

　部下の内面には、こうした問いが渦巻いていることもあります。

　だからこそ、「やりたくないなら、無理にやらなくてもいいよ」と軽く返してはいけませんし、「決まってるだろ、君の仕事だよ」と押しつけるのも最悪です。

　どちらも関係性を損ね、チームの空気を悪化させるだけです。

『リーダーの仮面』という本では、次のように書きました。

チームにおいては、「何をするか」以上に「誰がどう判断し、どこまで任せるか」が重要になります。
役割と責任を定義し、それを言語化してメンバーに示すのがリーダーの仕事です。
――『リーダーの仮面』より

　この言葉のとおり、リーダーの対応で最も大事なのは、「この仕事がなぜ必要で、なぜあなたにお願いしているか」を筋道立てて説明することです。

「この業務は、今のプロジェクトで◯◯という成果を出すうえで重要なタスクなんだ。あなたの◯◯というスキルが活きる場面だし、ここで任せたいと考えている」

　このように、目的・意義・個人の価値がセットで伝えられれば、相手も納得しやすくなります。

雑な指示は、組織の信頼を蝕む

「誰がやっても同じ仕事を、ただ割り当てるだけ」のマネジメントは、短期的には回っても、長期的に人を疲弊させます。
　チームの中に「この仕事に意味はあるのか？」という疑問がくすぶり続けると、やがて優秀な人から辞めていきます。

　頭のいいリーダーは、タスクを任せるときにこそ、関係性を深めるチャンスだと捉えます。
　その仕事の「価値」と「背景」を共有し、「誰に」「なぜ」任せるのかを丁寧に言葉にする。
　それができるかどうかで、チームの空気も、成果も、まったく違ってくるのです。

　優れたリーダーは、場当たり的な対応を避け、「構造」でチームを動かします。
　だからこそ、リーダーは仮面をかぶりましょう。

（本稿は、『リーダーの仮面』の著者・安藤広大氏が書き下ろしたものです）

安藤広大（あんどう・こうだい）
株式会社識学代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。2002年、早稲田大学を卒業後、NTTドコモ、ジェイコムホールディングス、ジェイコム取締役営業副本部長を経験。プレイングマネジャーとして「成長しないチームの問題」に直面し悩んでいたときに「識学」に出合い、2013年に独立。多くの企業の業績アップに貢献した。2015年、株式会社識学を設立。わずか4年足らずで上場を果たし、これまで9年間で約4500社に識学メソッドが導入されている。著書にシリーズ累計178万部を突破した『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』（ダイヤモンド社）がある。『パーフェクトな意思決定』はシリーズ最新刊。