「それでもおじさんは無視。すると、車内がざわつき始めました。『えー』『無視?』という声が次々に上がりました」
だが、男性はなかなか降りようとしなかったという。
「女性の一人は、ドアから足を一歩ホームに出して、ドアが閉まるのを防いでいました。そして口々に女性たちは文句を言い始めます。『降りなさいよ』『降りてよ、おじさん』しまいには、複数の女性たちから『降ーりーろ! 降ーりーろ!』と手拍子とコールが始まりました」
「騒ぎを聞きつけて駅員さんが登場。その男性は、ホームに引きずり降ろされました。女性から怒られることに喜びを感じるマゾヒストなのでしょうか。頑(かたく)なに降りないおじさんの執念が怖かったです。この騒ぎで、発車が2~3分遅れました。本当に迷惑な存在だなと、いま思い出してもイラッとしますね」
Bさんの言うように、男性の執念と、また団結した女性の恐ろしさを感じるエピソードでした。
男性が女性専用車両に
乗車する理由とは
駅員は、乗客の安全と運行ダイヤを守るという2つのプレッシャーの中で対応を迫られていることでしょう。ルールを無視し続けた乗客に対し、他の女性利用者の安全と快適性を守るために、鉄道側が最終的に強行的な措置を取らざるを得なかった事例といえます。
男性が女性専用車両に乗車する背景には、「急いでいる」「単なる勘違い」といった理由だけでなく、「制度は差別だ」という男性側の不公平感や、ルールを無視することで生じる「確信犯的な優越感」といった感情も潜んでいるのかもしれません。
女性専用車両は、痴漢被害をなくし、女性が安心して乗車できる環境を作るための措置であり、その意義は依然として大きいものです。法的な強制力はありませんが、ラッシュ時のスムーズな運行のために、ルールは守ってほしいものです。
女性専用車両という空間が、差別や分断ではなく、安全と配慮のシンボルとして機能し続けるための努力が求められています。
※鉄道トレンド総研に寄せられたエピソードをもとに再構成しています。







