世界の富裕層たちが日本を訪れる最大の目的になっている「美食」。彼らが次に向かうのは、大都市ではなく「地方」だ。いま、土地の文化と食材が融合した“ローカルガストロノミー”が、世界から熱視線を集めている。話題の書『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著)から、抜粋・再編集し、日本におけるガストロノミーツーリズム最前線を解説。いま注目されているお店やエリアを紹介していきます。

世界の富裕層が日本旅行にかける「想像を超えた予算感」に目ん玉が飛び出た!Photo: Adobe Stock

最も多いリクエストは1人予算600万円

 これまで説明してきたような世界の富裕層がガストロノミーツーリズムを楽しむ目的地には、当然日本も含まれます。これから紹介するエピソードは、私の知人から聞いた話です。

 彼は、富裕層向けのオーダーメイドの旅行会社を日本で営んでおり、世界各国から旅のオーダーを受けています。

 それによると、昨年、最も多かったリクエストは一人予算600万円とのこと。5人家族の場合、3000万円ということになります。

 旅行期間は、2週間ぐらいでしょうか。もちろん、費用の多くを占めるのは食費ではなく宿泊費になるでしょうが、それにしても3000万円というのはさすがにリッチです。

「そういう人は、どうやってオーダーしてくるんですか?」とお聞きしたところ、次のような話をしてくれました。

「彼らが住んでいるところ、仮にアメリカだとすると、そこには彼らのことだけを相手にしているエージェンシーがあるんです。富裕層たちはそこに、たとえば『来年の8月、2週間ぐらい日本に行こうと思っているからプランを立ててほしい』と依頼します。
そうすると、そのエージェンシーは、依頼主のプライベートや趣味嗜好を知り尽くしているので、それを踏まえた上で私のような現地の旅行会社に声をかけます。オーダーメイドの高級旅行をプランニングできる会社は限られているので、いくつか手が挙がった中で競合させて、発注先を決定します」

富裕層を満足させるレストラン選びとは?

 受注額が大きいので、依頼を獲得できれば大きな利益が望めます。そのために彼が気を配っているのがレストランの選び方です。「とにかく名店を押さえておけばいいだろう」と考えて、昼夜昼と三つ星レストランばかりを盛り込むのはNGとのこと。「それでは勝てません」と言います。

 というのは、二日目の夜などはやはり疲れが出てくるので、ずっと格式の高いファインダイニングが続くと、相手はさらに疲れてしまうため、満足感が低下するからです。そういう時は、蕎麦やお粥など胃腸に負担のないものを選ぶようにしているそうです。

 また、富裕層は普通の二つ星、三つ星には行き飽きているでしょうから、いかに人とは違う、ユニークな体験を提案できるかということが勝負になってくるとのことでした。
 富裕層の食に対する欲求は、一筋縄ではいかないということです。

※本記事は、『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著・ダイヤモンド社刊)より、抜粋・編集したものです。