世界の富裕層たちが日本を訪れる最大の目的になっている「美食」。彼らが次に向かうのは、大都市ではなく「地方」だ。いま、土地の文化と食材が融合した“ローカルガストロノミー”が、世界から熱視線を集めている。話題の書『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著)から、抜粋・再編集し、日本におけるガストロノミーツーリズム最前線を解説。いま注目されているお店やエリアを紹介していきます。
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某国首脳ご一行アテンドで、困惑の事態が勃発!
私にもこんなエピソードがあります。
食事情に関して人から相談されることも多く、「あそこの店は、どうやったら予約が取れますか?」「あなたの顔で、なんとか予約してもらえませんか?」「これこれこういう料理を出してくれる店を知っていますか?」などとよく聞かれるのですが、ある日も無理難題が寄せられました。
相談してきたのは、とある国の首脳御一行をアテンドしていた方。事前に「日本の美味しいものが食べたい」とオーダーがあったため、そのアテンダーの方は、初日に寿司、二日目には天ぷらを予定していたそうです。当然、失礼がないように、どちらも最高級の店を何か月も前から予約していました。
ところが、初日の寿司屋を後にすると、御一行はこんなことを言い出したのです。
「明日も寿司が食べたい」
これを聞いたアテンダーの方は、血の気が引いたことでしょう。なぜなら、気に入ってくれたのはいいのですが、そうは言っても今日の明日では、美味しい寿司屋は今さら予約が取れないからです。一人なら無理を言って入れてもらうこともできるかもしれませんが、御一行は10人程度。この人数で、しかもセキュリティがしっかりした、味も間違いがない店なんて一体どこにあるのでしょうか。
こうして、困り果てたアテンダーの方が私に相談してきたのでした。「予算は青天井です!」と懇願されても、10人も急遽入れる、相応な店などありません。
何軒も知り合いの寿司屋に連絡しましたが、案の定、断られ続けました。しかし、その中の一軒のオーナーシェフがこんな妙案を出してくれたのです。
「寿司屋のカウンターはいっぱいだけど、階上にある秘密のバーなら使えるよ」
「それは素晴らしい」となり、オーナーは急遽、バーのカウンターを寿司用に整え、自ら握ってくれたのです。
アテンダーの方も彼らに「エクスクルーシブな寿司体験を用意しました」と説明し、御一行も「普通の寿司屋で食べるよりも、このほうが特別感があってよい」と、非常に満足して帰国されたそう。世界の富裕層というのは、本当に自由気ままで、特別な体験が大好物なのです。
※本記事は、『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著・ダイヤモンド社刊)より、抜粋・編集したものです。






