日本の国旗と米国の国旗写真はイメージです Photo:PIXTA

アメリカの専門家のあいだで
「日本の核武装論」が広がる背景

 アメリカの安全保障戦略の専門家のあいだで「日本は核兵器を保有すべきだ」という議論が、静かではあるが着実に広がりつつある。

 これまで国際的な核拡散はアメリカにとって絶対的な禁忌であり、アメリカはあらゆる手段を使って核保有国が増加することをいかに抑えるかに腐心してきた。ところが、最近になって徐々に「タブー」でなくなりつつある。

 日本などに核武装をさせるべきだという意見は、一部の軍事評論家が唱えていたにすぎず、あくまで少数派だった。それが、国際政治学者、戦略研究者、そして保守派の政策エリートたちにまで広がり始めている。

 とくに共和党を中心とする保守的な安全保障コミュニティでは、日本の核武装を「東アジアの安定に不可欠な現実的オプション」として扱うことが増えているのである。

 日本の核保有論が勢いを増している背景には、アメリカが抱える構造的限界と、国際秩序そのものの変質がある。

 ロシアによる武力侵攻、中国による覇権拡張、中東の混乱という複数の戦略的挑戦が同時に進行しており、アメリカは多面的に軍事力を展開できる余力を失っている。

 国内では財政赤字、社会保障費の増大、インフラ崩壊といった「内向きの圧力」が強まり、冷戦期のようなアメリカが世界のどこにでも軍事力を自由に展開できる時代はすでに終わったと見るべきだ。