中国に根強い
「アメリカ不介入」への期待
日本の核武装論には、もうひとつの深刻な議論が絡んでいる。それは、中国に根強い「アメリカは日本のために核戦争をするつもりなどない」という期待である。
実際、アメリカの国家防衛戦略は近年大きく見直され、「米国本土と西半球の防衛を最優先とする」という原則が打ち出されている。これは東アジアやヨーロッパへの軍事投入を減らし、同盟国により多くの負担を引き受けてもらうことを意味する。
アメリカでは、遠いアジアで大規模な戦争を始めることに対して国民的支持は期待できないと見ており、日本側が抱いている「アメリカは中国の台湾併合を阻止するはずだ」という確信とは、かなり隔たりがある。
この温度差から、「アメリカ不介入」を期待する空気感が中国では根強くあるといわれている。
アメリカが台湾有事への介入に躊躇すればするほど、日本への圧力は増大する一方である。そのとき、日本が独自の抑止力を持たなければ、東アジアの力の均衡は急速に崩れ、地域秩序は一気に中国主導へ傾きかねない。
この悪循環を断ち切るために、日本の核武装が必要だという主張が持ち上がっているのである。
日本の核武装が
変える日米同盟の構造
アメリカは長年、「日本は軍事的に弱いままでよい」という立場を選択してきた。この考えはとくに民主党で根強く、六四天安門事件など特定の時期を除いて、戦後のアメリカは結果として「日本を弱くし、中国を強くする」ことにつながる政策をとってきたと指摘されることも多い。
経済力の強い日本を、軍事的にアメリカに依存させることで、アメリカは日本を“管理”しようとしてきた。また、実際、それはかなり機能してきており、1980年代に日本経済が強大になったとき、アメリカはプラザ合意などでその力を削ぐことに成功している。
だが、中国の台頭と台湾有事の現実化が、この構造を根底から揺さぶっている。戦後の対日・対中政策が結果的に中国の急成長を許した側面が明らかになりつつあり、アメリカ自身が戦略の再調整を迫られている。







